「牧師」活動を始めた元リヴァプールFW、ロベルト・フィルミーノの決断とは
名将ユルゲン・クルップ率いるリヴァプールFCでキーマンとして活躍したロベルト・フィルミーノ。モハメド・サラーやサディオ・マネといった名選手とともに欧州最高クラスの攻撃ラインをなしていた。
リヴァプールで8シーズンをプレーした後、現在はサウジアラビアのクラブに在籍しているフィルミーノだが、そんなかれが新たな決意を固めたようだ。
アル・アハリ・サウジFCで最初のシーズンを戦い、35試合に出場して10得点を挙げた後、フィルミーノはインスタグラム上で重大発表をして多くの人を驚かせた。32歳のかれはサッカー選手としてのキャリアを継続しながら、新たな道を切り拓いた。キリスト教福音派の牧師になったのだ。
フィルミーノが晴れて牧師となった聖別式は、2024年6月29日にマナ教会で執り行われた。教会はかつてフィルミーノ自身が故郷の街マセイオに設立したもの。この新しい門出には妻のラリッサ・ペレイラが付き添った。
もちろん、フィルミーノは一時の気まぐれで牧師になったわけではない。人生におけるこの新しい章は、長い時間をかけて段階を踏みながら用意されてきたのであり、そのきっかけはリヴァプール時代に福音派洗礼を受けたことだった。2020年にさかのぼろう。
2020年、ロベルト・フィルミーノは洗礼を受けてキリスト教徒になった。洗礼式には当時リヴァプールでチームメイトだったブラジル代表のアリソン・ベッカー(かれも敬虔なクリスチャンとして知られている)が付き添った。この洗礼式のもようは、当時フィルミーノがSNSを通じて発信している。
その投稿によると、フェルミーノは福音派の伝統に則り、プールの水に頭まで浸かって福音派キリスト教徒になった。洗礼を授けたのは、牧師とアリソン・ベッカー。洗礼を受ける前、プールに集まった信徒たちを証人に、かれはマイクを使って信仰の表明を行ったようだ。
大きな転機となるこの一歩を踏み出してから、フィルミーノはさらに信仰を深めていき、2021年に故郷マセイオにマナ教会を設立した。妻ラリッサ・ペレイラと福音派牧師のジャイロ・フェルナンデス、ケイロ・メデイロスが教会設立を支えたという。
それに続けて、マナ教会をメシアス、ペドラ・ブランカ、ドイス・リアショス(いずれもブラジル)にも設立し、西ヨーロッパのルクセンブルクにもひとつ、イングランドのリヴァプールとマンチェスターにも設立した(かれはイングランドに8年間住んでいた)。さらにはミッションスクールと社会支援のための非営利団体「Instituto Fé Viva」も立ち上げた。
4年前に福音派の洗礼を受けて以来、フェルミーノはこうした活動をしており、その次のステップとして牧師になるという決定的な一歩を踏み出したのである。感動的な聖別式の様子は、インスタグラムのアカウントを通じ、1,560万人あまりのフォロワーに共有されることになった。
「マナ教会設立3周年。記念すべき、忘れられない夜です。この教会は神の御心の内に生まれました。私たちは主(しゅ)が為すすべてのことを間近で見ることができるという特権に深く感謝しています」と、かれはそのインスタグラムの投稿の冒頭で語っている。
「キリストと出会って以来、心の中にはある熱望が燃え立っています。私たちに差し伸べられたこの愛を、多くの人にも知ってもらいたいのです。そしていま、また別の願望と責任が生まれました。それは神の御心を実践する牧師となり、神の王国の協力者となることです」と、かれは綴っている。
投稿はこう締めくくられる:「神が垂れる憐れみの大きさを前に、私たちはまったく唖然とする思いです。神のみわざは本当に計り知れません! 神よ、感謝します」。フェルミーノは協力者への感謝も忘れずに付け加えた:「ありがとう、ジャイロとケイラ(前出の牧師たち)。私たちの背中を押し、私たちを信じてくれて」
この聖別式により、フィルミーノは信仰の世界で新たなスタート地点に立ったといえる。とはいえ、かれはサッカー選手としてもなお話題を提供しつづけている。
フィルミーノのサッカー人生を振り返ると、まずはクルーベ・ジ・レガタス・ブラジルに練習生として所属したのち、フィゲイレンセFCでプロとしての第一歩を踏み出している。フィゲイレンセFCには17歳のときに加入、やがて頭角をあらわし、クラブの1部リーグ昇格に大きく貢献した。
フィルミーノは21歳のときに欧州へ移籍しているが、その背景にはサッカーゲーム『Football Manager』を介してスカウトに発掘されたという逸話がある。ルッツ・ファンネンシュティールのスカウトで2010年にTSG1899ホッフェンハイムと契約を交わし、ブンデスリーガに彗星のごとくデビューしたフィルミーノは、やがてストライカーとして定着した。特に2013-2014年シーズンは公式戦37試合に出場して22ゴールを挙げる大活躍をしている。
ホッフェンハイムで5シーズンを過ごしたあと、フィルミーノはリヴァプールFCに移籍、ユルゲン・クロップ監督のもと、2017-18年シーズンにはキャリアハイとなる27ゴールをマークした。
リヴァプールは2020年にプレミアリーグ制覇、2022年にはカラバオカップ、FAカップ、FAコミュニティ・シールドで優勝している。フィルミーノの活躍がとりわけ光っていたのは、UEFAチャンピオンズリーグ2018-2019決勝でトッテナム・ホットスパーFCを破った試合や、2017-2018年と2021-2022年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦である。もっとも、これらの決勝戦でリヴァプールはレアル・マドリードに敗れている。
それと同時期にフィルミーノはブラジル代表としても活躍し、コパ・アメリカに3大会連続で出場(2015年、2019年、2021年)、2019年には決勝戦でペルー代表を3-1で下し、優勝を経験している。2018年にはワールドカップ(ロシア大会)にも出場、大きな足跡を残した。
フィルミーノは現在サウジアラビアのアル・アハリ・サウジFCで現役を続行中で、同クラブでキャリアを終えるかどうかは今のところ未定だ。その一方で、すでにかれは自身の教会で牧師としてのつとめを行っており、教会の発展にこれからますます尽力することは間違いなさそうだ。
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