イスラエルのガザ侵攻に声を上げるトップアスリートたち
10月7日に始まったハマスによる奇襲攻撃を受けイスラエル情勢が緊迫する中、世界は事態の進展を固唾を呑んで見守っている。
そんな中、著名なアスリートたちは暴力の応酬に反対の声を上げ、激しい対立に巻き込まれた人々への支援を呼び掛けはじめた。一体、だれがどのようなコメントを発表しているのだろうか?
イスラエル人の妻を持つレアル・マドリードのゴールキーパー、ティボー・クルトワ(ベルギー)はInstagram上で、「現状に心を痛めております。この悪夢が早く終わることを願いつつ、イスラエルの友人や家族に心から寄り添いたいと思います」と投稿した。
NBAで唯一のイスラエル人選手、デニ・アヴディヤを擁するワシントン・ウィザーズは、同チームについて「イスラエルの人々の味方です」と投稿。アヴディヤ選手自身もInstagram上で、個人的に関りのある人が戦禍に巻き込まれてしまったと明かした。
一方、メジャーリーグベースボール(MLB)は、SNS上で「イスラエル市民に対するテロ行為には背筋が凍る思いで、心を痛めています」とコメント。
イスラエル人の両親を持つボルチモア・オリオールズのディーン・クレーマー投手は、イスラエル代表として国際大会でプレーしたこともある。いま祖国が置かれている惨状を受け、「言葉もありません。心が引き裂かれる思いです」と苦悩を露わにした。
両親がエルサレムに滞在中だと『デトロイト・ニュース』紙に明かしたのは、デトロイト・ライオンズのアレックス・アンザローネ選手。2人が安全に避難できるよう政府に働きかけているという。いわく:「一大事です。それしか考えられません」
ボストン・セルティックスのコーチを務めるジョー・マズーラは試合前の記者会見で今回の戦争について語り、イスラエルの人々に向けて「たくさんの思いと祈りが必要だ」とした。
マズーラいわく:「私は昨年も(イスラエルを)訪れましたし、2016年にも行きました。イスラム教徒であろうとユダヤ教徒・キリスト教徒であろうと、イスラエル人であろうとパレスチナ人であろうと関係ありません。みな人間であり、何度も危機を経験しているのです。米国は建国400年に過ぎませんが、彼らは1万年も苦労し続けています。国際情勢を鑑みれば本当に難しい地域だとわかるでしょう。だからこそ、私たち全員がそのことを認識すべきだと思います」
また、イスラエル支持が目立つ中でパレスチナを擁護するアスリートたちもいる。
ボクサーのユネス・ベンジマはInstagramに、「両面から見つめるべきだと言われますが…… 残念ながらそれはできません。一方的だからです。見聞きしたり物を読んだりしましたが、同じことです。一方が不法占拠しているのですから。パレスチナはイスラエル人の通行を制限する検問所など設けていません。テルアビブにパレスチナ人狙撃兵はいません。パレスチナは米国どころか誰の支援も得られていないのです」と投稿。
フェンシングの米国代表選手としてオリンピックにも出場したイブティハージ・ムハンマドは、マルコム・Xの言葉を引用してこう投稿している:「新聞には気を付けないと、抑圧されている人々を憎み、抑圧している側を慕うようになってしまう」
オーストラリアのラグビーリーグ選手、ジョシュ・アッド=カーもパレスチナ支持。パレスチナ人の窮状を先祖代々の土地を奪われたオーストラリア先住民になぞらえるイラストを投稿した。
ラグビーニュージーランド元代表のソニー・ビル・ウィリアムズは、イスラム武装組織ハマスについてテロリストではなく自由の戦士だとする投稿に「いいね」を付けたことで物議を醸している。また、Instagram上ではパレスチナ国旗を掲げ、「ガザ地区のために祈ります!」と投稿した。
一方、アーセナルのサイドバックでウクライナ人のオレクサンドル・ジンチェンコは、ダビデの星をあしらったイスラエル外務省の画像を再投稿してパレスチナ支持派からの非難を浴びることに。Instagramストーリーには「私はイスラエルの味方です」とあった。
パレスチナ問題に関する議論は立場が分かれており、どちら側に立つコメントをしても論争に巻き込まれるのは避けられない。
収まる気配のない戦争で双方に被害が広がる中、アスリートたちが感情的な反応を示すのは自然なことだ。事態の収束が見えない以上、今後もさらに多くのアスリートたちが声を上げることになるはずだ。