パリで注目された「編み物王子」:男子高飛び込みのトーマス・デーリー
華やかに閉幕したパリオリンピックでは、世界中から集まったアスリートたちがさまざまな競技で激闘を繰り広げた。一方、競技とは別の意外な特技でもメディアの注目をさらってしまった選手がいる。英国の飛び込み選手、トーマス・デーリーがそのひとりだ。
画像:銀メダルを掲げるトーマス・デーリー(写真左)と競技でペアを組むノア・ウィリアムズ(同右)
CNN放送によれば、デーリーはシンクロ高飛び込みに出場し、自身にとって5つめとなる五輪メダルを獲得するかたわら、せっせと編み物に励み、自作のセーターを完成させてしまったというのだ。
それがこの「PARIS 24」セーターだ。「A」の文字はエッフェル塔をイメージしたデザインで、裾には英国とフランスの国旗があしらわれている。
画像:Instagram @tomdaley
ちなみに、背中側には「Daley(デーリー)」という文字が編み込まれている。袖に見える数字の「5」はオリンピック5回出場を記念したものだろう。
画像:Instagram @tomdaley
このセーターがInstagram上で公開されると、プロ顔負けの出来栄えのおかげで、高飛び込みで獲得した銀メダル以上に大きな話題を呼ぶこととなった。
実は、デーリーがオリンピック会場で編み物をしていたのは今回が初めてではない。五輪公式サイト「Olympics.com」の日本語版によれば、2021年に開催された東京オリンピックの際には、漢字で「東京」の文字を入れたカーディガンを作り上げたそうだ。
ふつうの選手なら、出番の合間やチームメイトの競技中は緊張感に襲われたり、逆に手持無沙汰になったりするところだろう。しかし、そんなとき、デーリーの手には編み棒が握られていたというわけだ。
この習慣について、デーリー本人はCNN放送のインタビューの中でこう語っている:「撮影現場で出番待ちをしているときに編み物をする人が多いと教えてくれたのは夫(映画監督のダスティン・ランス・ブラック)でした。そこで、わたしもやってみようと思ったんです」
画像:応援に駆けつけた母のデビー・デーリー(写真左)と夫のダスティン・ランス・ブラック監督(同右)
ところで、肝心の飛び込み競技で、デーリーはどのようなパフォーマンを見せたのだろうか? 五輪公式サイト「Olympics.com」によれば、デーリーとノア・ウィリアムズのペアは463.44ポイントをマークして銀メダルを獲得。金メダルは490.35ポイントをマークした中国代表の楊昊(よう・こう)、練俊傑(れん・しゅんけつ)ペアの手に渡ったという。
また、この種目にはウクライナからティーンエイジャーのペアが出場し、ロシア軍のロケット攻撃によってトレーニングが中断された経緯を語ったほか、決勝戦に出場するたびに新たなタトゥーを披露することで知られるカシエル・ルソー(オーストラリア)が登場するなど、なにかと話題の多いゲームになったと『ガーディアン』紙が伝えている。
同紙によれば、デーリーは「競技が始まる前から勝ったような気分でした。家族や子供たちと一緒にあの場にいられたということだけでも、特別だったんです」とコメントし、家族のサポートに対する感謝を表したそうだ。