レアル・マドリードを率いる名監督、カルロ・アンチェロッティの素顔
スペインのレアル・マドリードを率いるカルロ・アンチェロッティ監督(65)。それ以前にはACミラン、パリ・サンジェルマンFC、チェルシーFC、FCバイエルン・ミュンヘンの監督を務め、欧州5大リーグの名門クラブで活躍するという輝かしい経歴を誇る。
名声の高さから「キング・カルロ」と呼ばれることもあるアンチェロッティ監督。チャンピオンズリーグでは指導者として4回の優勝、選手としては2回の優勝を経験している。
アンチェロッティ監督がサッカー界で成し遂げた偉大な業績は誰もが知るところだが、その素顔は意外と知られていない。そこで、今回はアンチェロッティ監督の人となりに迫ってみよう。
カラオケが大好きなアンチェロッティ監督。とくに、試合に勝利を収めた後、ピッチ上で歌うのがお気に入りだ。とりわけ、レナート・ゼロの「I migliori anni della nostra vita」を人前で何度も披露している。
SSCナポリの監督を務めていた2018年にクラブの公式イベントで自慢の歌声を披露したほか、その1年半前にもFCバイエルン・ミュンヘンを優勝に導いた際にカラオケパフォーマンスを行っている。
写真:YouTube
しかし、アンチェロッティ家のカラオケ自慢は監督だけではない。1984年に誕生した娘のカティアは2003年から2004年にかけて、歌手としてオーディション番組に出場していたのだ。
写真:Instagram @katiancl
イタリアの人気オーディション番組『Amici di Maria De Filippi』にミュージシャンの卵として登場したカティアだが、その後は歌手としてのキャリアを中断。
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そして、レアル・マドリードの栄養士を務めるミノ・フルコと結婚。2人の間には、アレッサンドロ、アンドレア、アウロラという3人の子供が生まれている。カティア本人はピラティス専門のスポーツセンターを経営しているという。
写真: Instagram @katiancl
一方、アンチェロッティ監督の婿となったミノ・フルコは仕事の上の重要なパートナーでもある。アンチェロッティ監督とともにSSCナポリ、FCバイエルン・ミュンヘン、エヴァートンFC、レアル・マドリードを渡り歩き、栄養士として選手のコンディション管理を担ってきたのだ。
写真:Instagram @katiancl
しかし、アンチェロッティ監督を支えているのは娘婿だけではない。多くのサッカーファンたちによれば、同監督が大成功を収めたのは息子ダヴィデのおかげなのだという。
1989年7月22日にパルマで誕生したダヴィデ・アンチェロッティも父と同じくサッカー選手の道を歩み、現在はレアル・マドリードのアシスタントコーチを務めている。チームが勝利した際には、ピッチ上で父と抱擁を交わして喜ぶ姿がよく目撃されている。
ダヴィデとカティアの母はアンチェロッティ監督の元妻、ルイーザ・ギベリーニだ。2人は1983年から25年間の夫婦生活を経て離婚。その後、ルイーザは2021年5月に病気でこの世を去っている。
アンチェロッティ監督と結婚していた当時、ルイーザ・ギベリーニはなんとヘリコプターパイロットの免許を取得。ACミランを率いる夫に同行すると同時に、パルマで暮らす家族との時間をつくるためだったそうだ。
その後、アンチェロッティ監督自身もヘリコプターパイロットの免許を取得。『コリエーレ・デラ・セラ』紙のインタビューでは、「免許を取ることにしたのは移動手段のためです。今ではヘリコプターの方がはるかに快適ですよ」と冗談めかして語っている。
アンチェロッティ監督の現在のパートナーはスペイン系カナダ人起業家のマリアン・バレナ・マックレー(写真右)で、2014年に結婚している。
シーズンが終わると妻とともにカナダでくつろぐのがアンチェロッティ監督のライフスタイルだ。
アンチェロッティ監督のサッカー観からは、現役時代に師事したアリゴ・サッキ監督の影響が垣間見える。
当時ACミランの会長だったシルヴィオ・ベルルスコーニ伊元首相を説得し、「カルレット(カルロの愛称、アンチェロッティ監督のこと)」にチームの命運を託したのは他でもないアリゴ・サッキ監督だった。この判断は大成功をおさめ、選手時代のアンチェロッティ監督はサッキ流サッカーの象徴となるのだった。
子供のころのアンチェロッティ監督はインテルナツィオナーレ・ミラノのファンだったという。『コリエーレ・デラ・セラ』紙はこんな逸話を伝えている:インテルの試合を一目観ようとスタジアムを訪れたもの、チケットを持っていなかったアンチェロッティ少年。しかし、熱心な様子に心を打たれた警備員がタダで中に入れてくれたそうな。
マントヴァで行われたこの試合で、インテルは対戦相手に5点差をつけ圧勝。アンチェロッティ少年は大喜びだった。
ご存じない方も多いかもしれないが、アンチェロッティ監督はサッカー映画『L'allenatore nel pallone』とその続編でベテラン俳優のリノ・バンフィと共演したことがある。役はもちろん現役時代の自分自身だ。また、テレンス・ヒルと共演した『The World of Don Camillo』では、サッカーチーム「デビルズ」の選手を演じている。
お気に入りの俳優はロバート・デ・ニーロだというが、スポーツ映画『エニイ・ギブン・サンデー』の中でアル・パチーノが披露した名言を引用しては、配下の選手を激励しているらしい。
ウェブサイト「pianetamilan.it」には、「2003年のチャンピオンズリーグ決勝の直前には、『エニイ・ギブン・サンデー』でアル・パチーノが語った名ゼリフを選手に伝えました。素晴らしいスピーチですよ」というアンチェロッティ監督の言葉が掲載されている。
同サイトによれば、アンチェロッティ監督には他にも趣味があるようだ。いわく:「映画のほかに、料理するのも好きです。毎日豚肉を食べて育ちましたからね」
2冊の自伝を出版しているアンチェロッティ監督。1冊目のタイトルは『Preferisco la coppa: vita, partite, e miracoli di un normale furioclasse(優勝カップを所望:一流普通人の人生、試合そして奇跡)』(2009年)で、つつましい農家の少年がどのようにしてサッカー界の伝説になったのかが語られている。
そして2016年にはマイク・フォード、クリス・ブレイディと共著で2冊目の自伝『戦術としての監督(原題:Il Leader calmo: come conquistare menti cuori e vittorie』を出版。サッカー史に残る名監督のすべてが語られた決定版だ。