グアルディオラ監督が「サッカーをつまらなくした」?:元マンチェスター・ユナイテッドGKの主張とは
現在、プレミアリーグのマンチェスター・シティで指揮を執るジョゼップ・グアルディオラ監督。同監督のスタイルは世界のサッカーに革新をもたらした一方、サッカーを「つまらなくした」という批判もあるようだ。
マンチェスター・ユナイテッドでゴールキーパーを務めた元サッカー選手のティム・ハワードは、サッカー界のあらゆるチームがグアルディオラ監督のスタイルを真似しようとすることで「サッカーがつまらなくなった」と主張。
現役時代はエバートンでも活躍したハワードは、米放送局『CBSスポーツ』に対し、選手の質が伴っていない場合があるにもかかわらず、あらゆるチームがグアルディオラ監督の「攻撃的なスタイル」を模倣しようとしていると語った。
同氏は「グアルディオラは、誰もがポゼッションフットボールを実現できると語ってきた。しかし、実際はそうではない」と主張。さらに、「どのチームでもできるわけではない。そのスタイルを本当にうまく実現できるのは世界で3チームくらいだろうね。時には別のスタイルに取り組むことを決断する必要がある」と語った。
こうしたハワードの発言は、トッテナムやPSGを率いたマウリシオ・ポチェッティーノが米国男子代表の新指揮官に就任したニュースを受けて行われたものだ。同氏はポチェッティーノ新監督がグアルディオラ監督を模倣するのではなく、自らのスタイルを貫くべきだと考えているようだ。
同氏は「ポチェッティーノ時代のトッテナムは、4-4-2のフォーメーションが基本で、攻撃時にはフォワードとサイドの2枚が連携し、同時に堅固な守備をつくりあげていた。少なくともそういうスタイルを目指していたはずだ」と語った。
サッカー米国代表のレベルは年々上がり、有名チームに所属する選手も増加。しかし、W杯や国際大会で思うような結果は出せていない。米国代表にグアルディオラの複雑なスタイルはフィットしないかもしれないというハワードの指摘は的確だろう。ときに激しいコンタクトを厭わず、より直線的にゴールを目指すスタイルをとることも必要になるはずだ。
グアルディオラ監督のスタイルがサッカーをより画一的なものにし、サッカー界のあらゆるチームがそれを真似するようになったという指摘は絶えない。たしかに、ロングパスやロングシュートの流行は去り、堅実なビルドアップ、サイドチェンジ、マイナス方向へのクロスといった「グアルディオラ式」のサッカーは世界を席巻している。
現代サッカーに多大な影響を与えた同監督のスタイルだが、確かにサッカーがあまりにシステム化されていて、以前のような感動を得られなくなったという批判もありうるだろう。
しかし、最近のアーセナル対マンチェスター・シティの試合を見れば、サッカーのエキサイティングな面に変わりはないように思える。2-2で終わったこの試合では、試合終了直前の98分にマンチェスター・シティのストーンズが同点ゴール。ファンや選手たちが体験する感動は、チームのスタイルによって弱まることはないだろう。
グアルディオラ監督のスタイルが浸透したことで、欧州サッカーでは選手たちの自由が少なくなり、組織的なプレーが求められるようになった。もちろんチームによって例外もあるが、10~20年前のサッカーとは著しい変化があるのは確かだ。
本当にグアルディオラ監督のスタイルがサッカーを「つまらなくした」のだろうか? それともティム・ハワードの発言は過去に囚われているだけなのだろうか。サッカーにまつわる議論は尽きない。