コルセットからボディスーツへ:女性スポーツウェアの歴史
スポーツの歴史を通じ、レディスウェアは大きな進化を遂げてきた。身体を締め付けるコルセットや動きづらいロングスカートから、機能性の高いレギンス等へと大きく様変わりしたのだ。ファッションと社会、そしてスポーツをめぐる女子スポーツウェアの進化をみてゆこう。
今年開催された女子サッカーW杯では、各国の代表チームが従来の白いショーツの代わりにカラーショーツを選択。とりわけカラフルだったのはイングランド、ニュージーランド、カナダ、フランス、ナイジェリア、スペイン、米国代表チームだ。
白ではなくカラーショーツを選択したのは女性特有の現象に配慮したためで、スポーツ学の権威、アキラ・R・カーター=フランシック博士はこれを「正義」と表現。もちろん快適性を高めることはアスリートのパフォーマンス向上にもつながる。
女子スポーツウェアのファッション性と快適性のバランスについてはつねに見直しが行われている。今年7月初旬に開催されたウィンブルドン選手権大会では、エレーナ・リバキナとシェルビー・ロジャースがダークカラーのアンダーウェアを着用して話題を呼んだ。
ウィンブルドン選手権大会には白いウェアを着用することという独自のルールがある。しかし、選手たちの訴えを受けた主催団体オールイングランド・ローンテニス・クラブ(AELTC)は白いテニスウェアの下にダークカラーのアンダーウェアを着用することを許可した。
この規定変更のおかげで選手たちは以前よりも自由にウェアを選ぶことができるようになった。実際、さまざまな大会で多くの女子選手がダークカラーのアンダーウェアを着用している。
女子スポーツウェアの進化は1920年代から始まった。この時代に女性は従来のコルセットから解放され、ウエストを締め付けないスカートを着用、その長さもくるぶし丈から膝丈へと変わり、動きやすさが追及されるようになったのだ。
20 世紀半ばになると「アクティブウェア」という概念が誕生。レディスウェアを中心にしてスポーツ産業には新たな市場が生まれ、ナイロンやスパンデックスといった柔軟性に富む新素材の開発がすすんだ。
さまざまな社会変化が起こった70年代には時代のグルーヴ感を表すかのようにエアロビクスが流行。明るい色のレオタードやタイツが人気を呼ぶ一方、アディダスやナイキといったスポーツブランドの人気が急上昇した。
こうした色鮮やかなスポーツウェアは機能性に富むだけではなく、活気にあふれた時代を象徴するファッションアイテムともなった。そして、女性はライフスタイルの一部としてスポーツを取り入れるようになった。
21世紀に入るとレディーススポーツウェアはファッション業界に接近。スポーツウェアとしてのデザインと機能性はもちろん、より幅広いサイズとスタイルの品ぞろえで幅広い層の女性にアプローチするようになった。
とはいえ女子アスリートと商品開発を行う企業の間では、いまだレディーススポーツウェアのイメージについてかみ合わないことも多い。
大会規定にも遅れが見られる。2021年に開催された女子ビーチハンドボール欧州選手権では、ノルウェー代表チームが義務付けられていたビキニを拒否してショートパンツを着用。主催団体から罰金を科せられている。10月、国際ハンドボール連盟はユニフォーム規定を見直し、ショートパンツの着用を認めた。
2021年の東京五輪に出場した体操女子のドイツ代表チームは、これまでのレオタードではなく足首まで覆うボディスーツを着用。これまで続いた露出の多いウェアに対し、ユニフォーム規定の見直しを求める声が高まっている。
フィールドホッケーのイングランド代表チームのテス・ハワードは、女子スポーツウェアの規制改革に貢献した一人として今年の「チェンジメーカー・アワード」賞を受賞。 「瞬間的変化ではなく、持続的な運動とならなければなりません」とコメントした。
米長距離選手として活躍したローレン・フレッシュマンは、「自分の喜びや楽しみのためにパワフルに身体を動かす女性は、2023年には決して革命ではなくスタンダードとなるべきでしょう」としている。