レアル・マドリードで不遇をかこったハメス・ロドリゲス、コパ・アメリカで輝きを取り戻す
先日開催されたコパ・アメリカ2024でコロンビア代表が目を瞠るような活躍を示して準優勝を果たした。コロンビアに往年の輝きをもたらしたキープレーヤーは、伝説的MFのハメス・ロドリゲスだ。
コロンビア出身のハメス・ロドリゲスは、かつてレアル・マドリードで脚光を浴びていたこともあったが、このところ落ち目になっている感は否めなかった。しかしコパ・アメリカ2024では存分に力を発揮して力強い復活を印象付けた。今回はそんなロドリゲスの波乱に満ちたキャリアを追ってゆこう。
ハメス・ロドリゲスがまず世界的な注目を集めたのは、2014年のブラジルW杯で大活躍したときだった。5試合に出場し6得点を挙げて得点王になり、おまけにウルグアイ戦で決めた華麗なボレーシュートが当大会のベストゴールに選ばれたのだ。その大活躍もあって、コロンビアは同国初のW杯ベスト8進出を果たした。その後、ロドリゲスはレアル・マドリードと契約を交わす。
レアル・マドリードに加入して最初のシーズン、カルロ・アンチェロッティ監督のもと、ロドリゲスは早くもスター選手として定着し、クリスティアーノ・ロナウドと豪華タッグを組んだ。46試合に出場して17ゴール、18アシストの活躍。ラ・リーガは彼をシーズン最高のミッドフィールダーに選んだ。
しかしながら、チームにタイトルをもたらすことができなかった責任をとる形で、カルロ・アンチェロッティ監督が退任することになる。代わりにやってきたのは、ラファエル・ベニテス監督、次いでジネディーヌ・ジダン監督だった。新監督の新体制のもと、ハメス・ロドリゲスはレギュラーから外されてしまう。
2017年夏、ロドリゲスはFCバイエルン・ミュンヘンに2年間のレンタルで移籍することが発表された。契約では、レンタルの期限が切れるタイミングでバイエルンが彼を買い取ることも可能ということになっていた。バイエルンでは、67試合に出場して15得点、22アシストの活躍だった。
結局、バイエルンは買い取りを行わず、ロドリゲスは2019年にレアル・マドリードに復帰することになる。しかし、試合での負傷や、またジダン監督とあいかわらず反りが合わなかったこともあり、わずか14試合のみの出場で1ゴール、2アシストにとどまってしまう。
満足に出場できなくなったロドリゲスは、2020年9月にレアル・マドリードを離れ、エヴァートンFCに移籍することになった。エヴァートンFCでは、恩師のカルロ・アンチェロッティ監督と再会を果たす。
しかし、エヴァートンFCでもふるわなかった。26試合に出場し、6ゴール、9アシスト。ロドリゲスはふたたび荷造りの必要に迫られた。
ハメス・ロドリゲスは2021年、カタールのアル・ラーヤンSCに移籍することを決めた。多くの人はこの知らせを受けて、30歳になったロドリゲスもそろそろ現役引退かと考えたのだった。じっさい、アル・ラーヤンSCではまったく振るわなかった。最初のシーズンは14試合に出場して5ゴール、7アシスト。次のシーズンは負傷のせいでまともにプレーができなかったのだ。
2022-2023シーズン、ハメス・ロドリゲスは勇を鼓してヨーロッパに舞い戻った。もっとも、移籍先はギリシアのオリンピアコスFCという、ややマイナーなチームではあったが。しかし残念なことに、ロドリゲスはその新天地でも23試合に出場して5ゴール、6アシストというなんともおとなしいシーズンを過ごすことになり、チームから放出されることになる。
再びヨーロッパを去ることになったロドリゲスは、故郷である南アメリカ大陸に戻り、ブラジルのサンパウロFCに加入した。現在もそこに所属している。すでに2シーズンをプレーしているが、成績は20試合で2ゴール、4アシストとあまり芳しくない。ルイス・スベルディア監督はロドリゲスをレギュラーから外している。
一方、ハメス・ロドリゲスはコロンビア代表の主将として、不動の存在感を放ち続けている。さすがに2014年W杯の水準を再現することはできていないものの、ロドリゲス抜きのコロンビア代表は考えられない。とはいえ、今年のコパ・アメリカで彼がこのような復活を遂げるとは、おそらく誰も予想していなかっただろう。
ロドリゲス率いるコロンビア代表は、23年ぶりにコパ・アメリカの決勝進出を果たしたのだ。コロンビアとしては史上3度目の快挙である。コパ・アメリカでの最多アシスト記録を更新し(6アシスト)、同大会のMVPにも選ばれた。
最多アシスト記録の更新もすばらしいが、同じく特筆に値するのは、準々決勝のパナマ戦での活躍である。前半に1ゴール、2アシストという大会初記録を達成し、チームは5-0で完勝したのである。
コロンビア代表は決勝をアルゼンチンと戦い、延長戦のすえに0-1で敗れた。しかし、ハメス・ロドリゲスは獅子奮迅の活躍だったのだ。
準決勝でウルグアイに勝ったあと、ロドリゲスはマイクの前で、「13年間、この日を待っていました。幸せです」と、歓喜の涙にむせびながらコメントした。
パブロ・ガラベッロというアルゼンチン出身の元サッカー選手・指導者は、コロンビア代表のホセ・ペケルマン監督のもとでアシスタントをしていたころにハメス・ロドリゲスと関わっており、スペイン紙『AS』で次のように語っている。「われわれはロドリゲスのうちに旺盛なハングリー精神を認めていました。プレーしたいという熱意に溢れていたんです。だからこそ、ロドリゲスは代表チームに残り続けることができたのです」
パブロ・ガラベッロはつづけて、「ロドリゲスは監督と反りが合わなかったり、不幸な負傷に悩まされたりして、試合から遠ざかることもあります。しかし、ロドリゲスは集中力をとぎすまし、すばらしい選手へと化けるのです。そのような選手を人は尊敬しないわけにはいきません。そういう選手がチームを勝利に導くのですから」
今回のコパ・アメリカで、ハメス・ロドリゲスは長らく続いた不振の日々から復活を果たしたように見える。少なくとも当大会での活躍は、2014年W杯やそれに続くレアル・マドリード時代の輝かしいプレーを彷彿とさせるものだった。