アルゼンチンサッカーの伝説を比較:メッシとマラドーナ、どっちが上なの?

メッシとマラドーナ
神話を生んだマラドーナ
渇望されていたタイトル
データ面と感情面から評価
異なる時代、異なるフットボール
アルゼンチン代表戦におけるマラドーナの成績
4つのワールドカップに参加
アルゼンチン代表戦におけるメッシの成績
5つのワールドカップに参加
マラドーナ:90試合で29ゴール
メッシ:172試合で98ゴール
得点率で上回るメッシ 
アルゼンチン代表の最多得点王
ゴールアシスト記録
代表におけるマラドーナの優勝回数
代表におけるメッシの優勝回数
アルゼンチン、スペイン、イタリアでプレー
FCバルセロナとパリ・サンジェルマン
インテル・マイアミ
どちらも数多くの優勝を経験
あらゆるタイトルを手にしたメッシ
個人レベルの成績
バロンドール史上最多受賞選手
クラブレベルでのマラドーナの成績
クラブレベルでのメッシの成績
神格化されたマラドーナ
アルゼンチン(そして世界のサッカー)のシンボル
サッカー選手以上の存在
マラドーナ崇拝
マラドーナの型破りな人生
母国を離れたメッシ
アルゼンチンのファンからの視線
母国への忠誠を疑う声
代表引退を表明
栄光への道
これからも代表で活躍
メッシとマラドーナは永遠のヒーロー
メッシとマラドーナ

前人未到の活躍を続けるメッシは、同じくアルゼンチンの至宝マラドーナを超えたといえるのだろうか。尽きることのない比較論が交わされる2人について、試合データや評価をもとに比べてみよう。

Sports Unlimited News をフォローして世界のスポーツをいつも手元に

神話を生んだマラドーナ

メッシは2022年ワールドカップで母国をついにタイトルへと導いた。アルゼンチン代表が前回優勝したのは1986年のメキシコ大会、このときマラドーナには「神の手」をはじめさまざまな伝説が生まれた。一方、メッシにはそうした神がかり的なエピソードはなく、マラドーナには並ばないとする声もある。

画像は、メキシコシティのエスタディオ・アステカを肩車に乗って後にするマラドーナ。

渇望されていたタイトル

しかし、メッシは母国が待ち望んでいた世界タイトルをもたらし、アルゼンチンの英雄としての歴史を新たに刻んだ。

データ面と感情面から評価

ここでは試合データに加えて選手への思い入れといった"主観的”データも見てみることにしよう。メッシとマラドーナ、いったいどちらが上なのだろう?

異なる時代、異なるフットボール

忘れてはならないのは、2人が生きた時代はまったく異なるという点だ。サッカーのプレースタイルも評価方法も変化している。それによりデータの読み方には微修正を加える必要があるだろう。

アルゼンチン代表戦におけるマラドーナの成績

代表チームでの成績についてニュースサイト「TransferMarkt.es」によれば、ディエゴ・アルマンド・マラドーナは16歳3ヶ月と28日で代表デビュー。1977年のデビューから1994年の引退までの間に合計90試合に出場、うち42試合で勝利を収めた(全試合の46.7%)。

4つのワールドカップに参加

マラドーナは代表チームに加わり4つのワールドカップに出場した:1982年スペイン大会、1986年メキシコ大会(アルゼンチンが優勝)、1990年イタリア大会、1994年アメリカ大会。さらに、3つのコパ・アメリカにも出場を果たしている:1979年大会、1987年アルゼンチン大会、1989年ブラジル大会。

アルゼンチン代表戦におけるメッシの成績

一方メッシは18歳1ヶ月24日で代表デビューを果たし、2005年からワールドカップで優勝を収めた2022年にかけて合計172試合に出場、合計103勝(全体の59.9%)を挙げている。

5つのワールドカップに参加

メッシは5つのワールドカップ(うち優勝1回)に出場:2006年ドイツ大会、2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会。コパ・アメリカには6度の出場を果たしている(うち優勝1回):2007年ベネズエラ大会、2011年アルゼンチン大会、2015年チリ大会、2016年アメリカ大会、2019年ブラジル大会、2021年ブラジル大会。

マラドーナ:90試合で29ゴール

代表戦におけるマラドーナの得点数は合計29点:ワールドカップ21試合で8得点、コパ・アメリカ12試合で4得点、ワールドカップ予選8試合で3得点、親善試合38試合で14得点。

メッシ:172試合で98ゴール

一方、メッシはこれまでの代表選で98ゴールを挙げている:ワールドカップ26試合で13得点、コパ・アメリカ34試合で13得点、ワールドカップ予選60試合で28得点、親善試合51試合で44得点。

得点率で上回るメッシ 

アルゼンチン代表における両レジェンドの得点率を見ると、マラドーナが1試合あたり0.32得点であるのに対し、メッシは0.57得点とさらに高い数字を挙げている。つまり、ゴールスコアラーとしての腕はメッシの方が上だということができそうだ。

アルゼンチン代表の最多得点王

さらに、メッシは得点率で上回っているだけでなく、ワールドカップで合計13ゴールを挙げたことでアルゼンチン代表におけるワールドカップ最多得点王となった。一方マラドーナは、メッシ、バティストゥータ、アグエロ、エルナン・クレスポ、ゴンサロ・イグアインに次ぐ6位。

Sports Unlimited News をフォローして世界のスポーツをいつも手元に

ゴールアシスト記録

ゴールアシストにも目を向けてみよう。マラドーナは代表戦で14回(ワールドカップで8回、予選で1回、親善試合で5回)、メッシは55回(ワールドカップで8回、コパ・アメリカと親善試合で17回、予選で11回)を記録している。

代表におけるマラドーナの優勝回数

代表チームのタイトルについては、マラドーナは1986年のメキシコ大会で絶対的リーダーとして優勝を飾ったほか、1993年のCONMEBOL-UEFAカップ・オブ・チャンピオンズアルテミオ・フランキ杯、1979年のU-20ワールドカップ日本大会で優勝している。

代表におけるメッシの優勝回数

しかし、こうしたマラドーナの記録も、メッシが打ち立てた代表選の優勝記録には遠くおよばない。メッシは最近のワールドカップカタール大会優勝を始め、2021年コパ・アメリカ優勝、2008年オリンピック金メダル、2005年U-20ワールドカップでの優勝を手にしている。

アルゼンチン、スペイン、イタリアでプレー

ディエゴ・アルマンド・マラドーナのクラブ遍歴を見てみよう。まずアルゼンチン・ジュニアーズ(1976-1980)、続いてボカ・ジュニアーズ(1981-1984)、欧州にわたりFCバルセロナ(1982-1984)、ナポリ(1984-1992)、セビージャ(1992-1993)、そしてニューウェルス・オールドボーイズ(1993-1994)で活躍。最後にボカ・ジュニアーズ(1995-1998)に復帰し現役引退を迎えた。

FCバルセロナとパリ・サンジェルマン

メッシはマラドーナよりも変化の少ない道を歩んでいる。FCバルセロナのカンテラ出身のメッシは2004年から2021年まで17シーズンにわたりクラブに貢献、あらゆる人々からFCバルセロナにキャリアを捧げる「ワンクラブ・マン」だと思われていた。しかし、2021年から現在の所属先であるパリ・サンジェルマンへの移籍を発表。

インテル・マイアミ

2023年6月、パリ・サンジェルマンとの契約満了を迎えるメッシには中東リーグへの大型移籍、あるいは古巣FCバルセロナへの復帰の噂が流れた。最終的にヨーロッパを離れて米メジャーリーグ・サッカーのインテル・マイアミに完全移籍することを発表した。

どちらも数多くの優勝を経験

クラブレベルでの優勝回数でもメッシとマラドーナには大きな差がある。マラドーナはボカ・ジュニアーズでメトロポリタン選手権1回、FCバルセロナでコパ・デル・レイ1回、スペインのリーガ1回、スペインのスーパーカップ1回、ナポリでイタリアリーグ2回、UEFAカップ1回、コッパ・イタリア1回、イタリアスーパーカップ1回を制覇した。

あらゆるタイトルを手にしたメッシ

メッシのクラブレベルでの優勝記録はさらに目覚ましい:FCバルセロナで国内のリーガを10回制覇、スペイン国王杯7回、スペインスーパーカップ8回、FIFAチャンピオンズリーグ4回、ヨーロッパスーパーカップ3回、クラブワールドカップ3回を制覇した。パリ・サンジェルマンではリーグ1優勝とフランススーパーカップ優勝に貢献した。

個人レベルの成績

個人レベルでは、マラドーナは所属クラブで8回の得点王に輝き、1995年には栄えあるバロンドールを受賞、2000年にはFIFA最優秀選手賞、2003年にはゴールデンフット賞、2000年には20世紀最高の選手賞を受賞するなど、数々の栄誉を手にした。

バロンドール史上最多受賞選手

メッシは2009年のFIFA世界最優秀選手賞、2019年年間最優秀選手賞『The Best』、2020年のローレウス大賞の受賞に加え、ゴールデンブーツ賞を6回受賞(2010年、2012年、2013年、2017年、2018年、2019年)、さらにバロンドールでは合計7回(2009、2010、2011、2012、2015、2019、2021)というバロンドール史上最多受賞数を誇っている。

クラブレベルでのマラドーナの成績

クラブレベルでは、マラドーナは全所属クラブをあわせ合計589試合に出場、311ゴール、211アシストを記録、得点率は1試合平均0.53ゴールとなっている。

クラブレベルでのメッシの成績

他方、メッシはFCバルセロナとパリ・サンジェルマンで(ワールドカップカタール大会まで)831試合に出場、695ゴールと297アシストを記録。得点率はマラドーナを大きく上回る1試合当たり0.84点。

Sports Unlimited News をフォローして世界のスポーツをいつも手元に

 

神格化されたマラドーナ

しかし、ファンの受け止め方はどう評価すればいいのだろう。これは数字やデータとはかけはなれた問題だ。アルゼンチンの多くの人々とりマラドーナはいつまでも「神」であり、メッシに受け継がれた永遠の「10」番として生き続けているのだ。

アルゼンチン(そして世界のサッカー)のシンボル

マラドーナはつねに熱狂的なファンに支えられてきた。アルゼンチンの「象徴」そして「スポーツヒーロー」となり、彼に捧げられた音楽や芸術、果てはマラドーナ教という宗教まで生まれたほどだ。

サッカー選手以上の存在

「マラドーナは引退によりアルゼンチンに大きなトラウマを残した。マラドーナは優れたサッカー選手であっただけではない。わずか数年の間に何度も軍事独裁政権を経験し、あらゆる社会的不満を抱えていたこの国に勇気をもたらすきわめて特別な存在だったのだ」と、アルゼンチン出身でスペインを拠点に活動するサッカー選手でコーチ、サッカー理論家のホルヘ・バルダーノは記している。

マラドーナ崇拝

代表メンバーとしてマラドーナと共に戦った経験を持つバルダーノは、「(マラドーナは)多くの人々のフラストレーションの昇華先となっていた。だからこそ彼は神格化され、崇拝の対象となったのだ」としている。

マラドーナの型破りな人生

一方、マラドーナの極端な性格や型破りな行動も忘れてはならないだろう。さまざまなエピソードを巡り、現在もいくつかの論争が続いている。

母国を離れたメッシ

他方、メッシはアルゼンチンへの強い思いを持ちながらも、母国を遠く離れて活躍を続けている。アルゼンチンのロザリオに生まれたメッシは13歳で母国を離れてスペインに渡り、FCバルセロナのユースに入団して以来、ヨーロッパを拠点としている。

アルゼンチンのファンからの視線

メッシは若くして母国を後にしており、しかもメッシ率いるアルゼンチン代表はなかなか勝利を手にできていない。しかもマラドーナほど派手な性格ではないメッシは強力なリーダーシップをふるう訳でもない。そのためアルゼンチンのサッカーファンの中には、メッシに冷めた視線を向ける者もある。

母国への忠誠を疑う声

FCバルセロナに数多くのタイトルをもたらしながらも、メッシはアルゼンチン代表戦では力を発揮しきれず苦戦が続いていた。そのため、代表選ではクラブでの試合ほど力を入れていないのではないかという非難に苦しんだこともあった。

代表引退を表明

2014年ワールドカップでは決勝で敗れ準優勝、続いて2015年および2016年のコパ・アメリカも準優勝に終わり、母国にタイトルをもたらせなかったメッシは代表引退を示唆した。しかし、メッシのこうした決断は批判の声を高めることにつながってしまった。

栄光への道

最終的に、メッシは母国への愛情を理由に引退を撤回。2021年コパ・アメリカではみごと優勝を飾り、2022年のワールドカップカタール大会でも目覚ましい活躍により36年ぶりの優勝を母国にもたらした。

これからも代表で活躍

ワールドカップを制覇したメッシはメディアに対し、「W杯チャンピオンとしてまだ試合を楽しみたい」とコメントしている。いましばらく代表におけるメッシの活躍を目にすることができそうだ。

メッシとマラドーナは永遠のヒーロー

サッカー史を変えた類のない活躍を言葉にするのは難しい。芸術的なまでのボールさばき、ファンタジックなプレー、あまりにも完ぺきなゴールシュート...... スポーツを芸術の域に高めた2人のレジェンド、メッシとマラドーナについての熱い議論は尽きることがない。

Sports Unlimited News をフォローして世界のスポーツをいつも手元に

ほかのおすすめ