サッカーの元イングランド代表ウェイン・ルーニーの光と闇
マンチェスター・ユナイテッド時代に5度のプレミアリーグ優勝を果たし、イングランド代表で歴代2位の通算出場数と得点数を誇るウェイン・ルーニー。現在38歳のルーニーは、2021年に現役を退いてからは監督として活躍している。
BBCのポッドキャスト『Seven』で、元プロラグビー選手ロブ・バロウと対談したルーニーが、現役時代、とくに20代前半はメンタルヘルスの問題を抱えてアルコールに逃げ込み依存症に陥っていたことを告白した。
ルーニーはこう語った:「ピッチの内外で、さまざまな問題に直面していた。それから逃れるためにアルコールで発散していた」
さらにこう続けた:「20代前半の頃は何日も家にこもって気を失う寸前まで酒を飲んでいた。ほかの人の前では自分のことを恥ずかしく思ったり、相手の期待に応えられなかったと感じてしまうので、ひとりでいたかった」
アルコール関連でさまざまな問題をおこしたルーニーは、自分と同じ境遇に陥っている人たちに自身の経験を伝え、助ける側に回ろうとしている。
「幸いなことに、いまなら何か問題があれば躊躇せずにまわりの人に相談するようになった」ルーニーはバロウに明かした。
ルーニーは過去の苦い経験から、問題を解決するために周囲の人間を頼ることの大切さを学んだ。それをしなかったのは大きな過ちのひとつだったと告白している。
「結局、どうしたらいいかわからなかったから、乗り越えようとアルコールを選んだ。相談できる人がいたにもかかわらず、自分でなんとかしようと思ってしまったんだ。他の人の助けやアドバイスを受けないと、苦しい状態にとどまってしまう...... 私は数年間そういった状態だった」
2016年、30代となったルーニーが酩酊した写真がさまざまな新聞の一面を飾った。イングランド代表がスコットランド代表に勝利し、祝勝パーティーを開いた日のことで、同じホテルで行われていた結婚パーティーに参入し泥酔してしまったのだ。
そのわずか1年後の2017年にはチェシャー州にある自宅付近で、国内の法律で定められたアルコール濃度を超える飲酒運転をして逮捕されてしまう。
2021年にはルーニーが裸同然の3人の女性とホテルの一室にいる写真がSNSで拡散された。しかもその写真は自身が監督するチームが、手痛い敗北を喫したその日に撮影されたものだった。家庭でも仕事でも物議をかもしたことは今でもない。
ルーニーが洋服を着たまま椅子に座り眠り込んでいるような写真で、撮られた時は何が起きていたのか分からなかったとした。『ザ・サン』紙には自分を陥れようとする罠だったと語っている。
ルーニーには16歳から交際し、後に妻となったコリーンがいる。二人の関係が壊れるには至らなかったが、それ以降ルーニーがパーティに出かけるときは兄のジョーか信頼できる誰かが同伴し、ルーニーから目を離さないようにすることになったと『ザ・サン』紙に語っている。
妻のコリーンは、全ての原因はアルコールにあると語る:「ウェインが飲む時に一緒にいたグループの評判がよくないことを知っていました...... ウェインは飲みすぎると悪いことが起き、コントロールを失ってひどい決断を下してしまうことを認識しています」
ルーニーがアルコールに溺れるようになったのは、2004年に19歳でマンチェスター・ユナイテッドに移籍した直後からだ。
一方でマンチェスター・ユナイテッドで史上最多の253ゴールを挙げ、プレミアリーグで5度の優勝を果たしたほか、UEFAチャンピオンズリーグ、FIFAクラブワールドカップ、UEFAヨーロッパリーグなどのタイトルを手にした。得点数はプレミアリーグ史上2番目に多く、アシスト数も103で3番目に多い。
イングランド代表としても120試合に出場し53ゴールを挙げた。これはピーター・シルトンに次いで通算出場数で歴代2位、ハリー・ケインに次いで通算得点数で歴代2位となる。
若い頃からアルコール問題に悩まされ続けていたルーニーだが、キャリアを通して輝かしい成績を残した。今は家族の力を借りながらアルコール依存症とたたかい続け、自身の経験を通して誰かを頼ることの重要性を教えようとしている。