サッカー選手がユニフォームを脱ぐことを禁じたFIFA:その理由は意外とシンプル?
シュートを決めた直後にユニフォームを脱ぎ、喜びを爆発させるサッカー選手。以前はよく見られた光景だが、FIFAは2004年にルールを変更し、このような行為を禁止するに至った。
得点を決めた選手がユニフォームを脱ぎ、ゴールを誇示する姿はサッカーの試合においてとりわけ盛り上がる瞬間だったはずだ。では、FIFAはなぜ、これを禁止してしまったのだろう? これについては、FIFA側がその目的を明かさなかったこともあり、さまざまな憶測がなされてきた。
なかでも、FIFAによるルール変更の一因として、しばしば名前が挙げられてきたのが元ウルグアイ代表のディエゴ・フォルランだった。
事件は2002-2003シーズンのプレミアリーグで発生した。マンチェスター・ユナイテッドFCのフォワードだったフォルランが、後半40分にサウサンプトンFCのゴールネットを揺らしたのだ。
感情がたかぶっていたディエゴはユニフォームを脱いで喜びをあらわにした。しかし、残念ながら試合はまだ終わっていなかった。そのため、ディエゴは数分間にわたって、ユニフォームを手に持ったままプレーし続けなければならなくなってしまったのだ。
それは確かに異様な光景だった。しかし、ディエゴの半裸プレーがFIFAによるルール変更の決定打になったという事実はない。
FIFAのルール変更については、ゴールを決めた選手がユニフォームを脱いで時間稼ぎするのを防ぐためだという見方もなされた。しかし、主審はその時間を考慮してロスタイムを提示するはずであり、ルール変更の根拠としては弱いと言わざるを得ない。
一方、FIFAがルールを変更したのは宗教的な理由によるものだと主張する人々もいた。イスラム教圏などでは、ユニフォームを脱ぐ行為が観客に対して失礼に当たるためだ。たしかに、この説明には一定の説得力がある。
また、選手が観客席に投げたユニフォームに熱狂したファンが群がり、事故につながるのを防ぐためだという説もある。
しかし、実際のところ、ルール変更の理由ははるかにシンプルなものだったようだ。
言うまでもなく、サッカーの試合がもっとも盛り上がるのはシュートが決まった瞬間だ。しかも、報道などではそのシーンをリプレイし、繰り返し放映するのだ。つまり、スポンサーにとっては自社を宣伝する絶好の機会だというわけだ。
しかし、得点を決めた選手がユニフォームを脱いでしまったら、胸元にあしらわれたスポンサー名が見えなくなってしまう。クラブや試合に投資しているスポンサー企業としてはありがたくない話だ。
ちなみに、このルール変更を推し進めたジェローム・ヴァルクは当時、FIFAのマーケティング部門の責任者だった。
ともあれ、FIFAが定めるサッカー競技規則では第12条により、ユニフォームを脱いだ選手にはその理由を問わずイエローカードと罰金が科されることになっている。