スポーツをする子どもは賢くなる?科学的に効用を検証
体力や持久力をつけるために役立つ活動とされてきたスポーツ。しかし最近の研究によれば、子どもたちはスポーツを通じて体力はもちろん、知能も高められることが明らかになっている。つまり、スポーツをする子どもは「賢く」なるというのだ。ここでは、最新の科学的知見に基づき、そのメカニズムを見ていこう。
身体活動が健康に良いことはよく知られているが、脳にはどのような効果があるのだろうか。2022年12月に国際環境研究・公衆衛生ジャーナルに掲載された研究によると、子どもの定期的な身体運動は認知能力の向上につながるという。この研究は、スポーツが記憶力、集中力、精神面での柔軟性など、学習に不可欠な能力向上に役立つことを示している。
研究によれば、スポーツをすることで脳への血流が増加し、酸素と栄養素の供給が促進される。その結果、新しい神経経路が発達し、脳の機能が強化されるというのだ。つまり、スポーツによって筋肉だけでなく、脳も鍛えることができるということだ。
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また、スポーツは脳の実行機能の発達に役立つという。実行機能とは、計画立案、問題解決、衝動のコントロールを司る脳機能である。
それでは、認知機能を向上させるのに最適なスポーツは何だろうか。FEADEFの研究によると、特に戦略的思考とチームワークを必要とするサッカーやバスケットボールなどのスポーツが子どもの認知機能の発達に好影響をもたらすという。
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一方、水泳や体操などの個人スポーツは、自己をコントロールする力と集中力の向上に役立つという。スポーツの種類ごとに、発達が促される脳機能は異なるため、多種多様なスポーツに取り組むほど効果が高いと言える。
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重要なのは、ただ走り回るだけではなく瞬時に考えをまとめ、素早く決断するようなアクティビティを取り入れることだ。それによりスポーツ以外でも活きる優れた認知能力の発達を促すことができる。
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スポーツをすることで、認知能力が向上するだけでなく、社会性も養われる。サンディエゴ大学が発表したデータによると、スポーツは協調性やコミュニケーション能力、対立解決能力など社会で生きていくために重要なスキルを養うのにも有用だという。
チームスポーツに経験することで、子どもたちは他者の立場に共感しつつ目標に向かって協力し、勝利を目指していく方法を学ぶことができる。
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これらは単に勉強に活きるだけでなく、人生をより良いものにするために重要な能力だ。自己の感情をコントロールし、他者を理解する能力は、「感情知能」と呼ばれ、社会のなかで成功を掴むために重要な要素と見做されている。
スポーツがメンタルに与える好影響も見逃しがたい。精神状態が間接的に認知能力の発達に影響することもあるからだ。適度な運動により、ストレスを和らげるホルモンであるエンドルフィンが脳内で分泌され、リフレッシュ効果があることが証明されている。サンディエゴ大学によると、活発にスポーツに取り組む子どもは、不安、ストレス、抑うつの度合いが低い傾向にあるという。
近年の研究によると、スポーツによる脳へのメリットは幼少期に限ったものではないことがわかっている。FEADEFの研究によると、幼少期にスポーツに取り組んだことで脳機能を高めたメリットは、成人になっても継続するという。
幼少期に定期的な運動習慣をもっていると、その後の人生で記憶力や認知能力の柔軟性が向上する可能性があるという。つまり、スポーツによる脳の活性化効果は長期にわたることが証明されている。
科学的には、スポーツをすることで子どもが賢くなるのは明らかだ。認知機能や学業成績の向上だけでなく、社会性の強化や精神的健康の維持まで、スポーツは子どもが賢く健やかに育つために重要な活動だと言えるだろう。
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