専属通訳の水原氏に違法賭博問題で青天の霹靂:「二刀流」大谷翔平選手のこれまでを振り返る
2023年末にプロスポーツ史上最高額の契約金でロサンゼルス・ドジャースに移籍し、今年2月には電撃結婚を発表してファンを驚かせた大谷翔平選手。ところが、3月20日になって、大谷選手がこれまで通訳として信頼してきた水原一平氏が違法賭博に関与していた疑惑が発覚。大谷選手本人も巻き込んだ一大スキャンダルに発展してしまった。事件の影響がどこまで波及するのか気がかりではあるが、捜査の進展を待つ間、投打の両面で活躍する大谷選手のこれまでを写真とともに振り返ろう。
大谷選手は1994年に岩手県奥州市で誕生した。「東洋経済オンライン」によれば、父が少年野球の監督やコーチを務めていたこともあり、小学3年生のときに本格的に野球を始めたのだという。
同メディアのインタビューに応じた大谷選手いわく、少年野球でプレーした当時は身内のえこひいきで試合に出場していると思われないよう、人一倍練習に励み実力をつけていったとのこと。
その後、花巻東高校に進学した大谷選手は投手としてメキメキ頭角を現しはじめ、すでにメジャーリーグで活躍していたダルビッシュ有選手にちなんで「みちのくのダルビッシュ」の異名をとるようになった。
高校3年生の夏には、甲子園出場をかけた岩手県大会の準決勝で時速160キロメートルを記録するなど、圧倒的な実力を披露した大谷選手。しかし、チームは決勝で敗退し、高校最後の甲子園出場は叶わなかった。
高校卒業後は渡米してメジャーリーグに挑戦する意思を明かしていたが、まずは国内で力を養った方がよいという判断から2013年に日本ハムファイターズに入団。『Sports Graphic Number』誌のインタビューを受けた当時のゼネラルマネージャーは、渡米を強く希望する大谷選手のもとを何度も訪問し、なんとか説得したと回想している。
入団後の大谷選手は「二刀流」の使い手として、着実に成果を挙げてゆく。そして、2015年には最多勝利・最優秀防御率・最高勝率を達成し、投手として「三冠王」に輝いた。
2016年には日本ハムがパ・リーグを制し、日本シリーズ進出を決める。大谷選手にとって投手としての見せ場はあまりなかったが、打者として活躍。日本ハムは10年ぶりの日本一に輝いた。
2017年、大谷選手は相次いでケガに見舞われてしまう。この影響でワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への出場を断念することになったほか、シーズン中も大きな活躍を見せることができず、10月には右足首の手術を受けることに。しかし、翌月には念願だったメジャーリーグへの挑戦が始動する。
2017年11月に、メジャーリーグに所属する複数の球団と移籍交渉に入った大谷選手。12月にはロサンゼルス・エンゼルスとの契約が発表され、いよいよ新たな舞台へと旅立つこととなった。
開幕早々、立て続けにホームランを放ち鮮烈なメジャーデビューを果たすと、ケガに悩まされつつもホームランを量産。シーズン中にプレイヤー・オブ・ザ・ウィークとルーキー・オブ・ザ・マンスをそれぞれ2度も受賞する大活躍を見せ、ア・リーグの最優秀新人選手賞に輝いた。
2020年には、投打の両面で活躍する大谷選手の登場を受け、メジャーリーグが「二刀流枠」を新設。『読売新聞』によれば、この「大谷ルール」は2022年に正式に整備され、MLB以外の国際大会でも採用されるなど、新たな世界基準となりつつあるようだ。
コロナ禍がようやく収束した2021年、大谷選手はいよいよ本領を発揮し、米国の野球ファンたちを驚かせる。まず、松井秀樹選手がかつて打ち立てた、日本人選手によるMLBでのシーズン本塁打記録を塗り替えてしまった。『スポーツ報知』によれば、現在ニューヨーク・ヤンキースGMの特別アドバイザーとして活動する松井氏も、大谷の大活躍には脱帽とのこと。
野球ファンの投票によって選ばれた選手がドリームチームを結成して戦うMLBオールスターゲーム。大谷選手は圧倒的な人気でア・リーグ代表のメンバーとなった。2021年のオールスターゲームでは先発投手として1回を三者凡退に抑え、打者としての華々しい活躍ではなかったものの、チームは勝利を手にしている。
この年、大谷選手は「二刀流」選手として繰り広げた異例の大奮闘が評価され、満場一致でシーズンMVPに輝いた。NHK放送によれば、2021年シーズンはケガで成績不振だったことから、ここで実力を示さなければ、「二刀流」を続けることは難しいと覚悟を決めて臨んだシーズンだったという。さらに、『タイム』誌が選出する2021年の「世界で最も影響力のある100人」には、野球選手としてただ1人仲間入りを果たしている
翌年も大谷選手の勢いは止まらない。投手としても打者としても前年以上の成果を挙げ、2桁勝利・2桁本塁打を達成。これは、かのベーブ・ルース以来となる快挙だ。この年はニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手がホームランを量産し、MVPをはじめとする各賞を総なめしたが、『日刊スポーツ』紙によれば、2人はよきライバルとしてお互い対決を楽しんでいるようだ。
写真:アーロン・ジャッジ選手(左)と大谷選手(右)
続く2023年には、「侍ジャパン」の一員として第5回ワールド・ベースボール・クラシックに出場。米国相手の決勝では8回に登板し、エンゼルスのチームメイト、マイク・トラウト選手を三振に抑えて試合を締めくくった。日本代表は3大会ぶり3回目の優勝を果たし、大谷選手は大会MVPに輝いている。
もちろん、メジャーリーグでの活躍もピカイチだ。ベーブ・ルースですら成し遂げられなかった2年連続の2桁勝利・2桁本塁打を達成、メジャーリーグの記録を塗り替えたのだ。9月にはふたたびケガに見舞われ右ひじに2度目の手術を受けることとなったが、これは無事成功。ただし、2024年は打者としてのプレーに専念し、2025年に「二刀流」での復帰を目指すとのこと。
そんな中、それまで所属していたロサンゼルス・エンゼルスからおなじくロサンゼルスを本拠地とするドジャースに移籍するというニュースが伝えられる。しかも、プロスポーツ史上最高額となる、10年間7億ドルの大型契約だ。けれども、本人が後払いを希望したことについては、税制上の問題があるという批判の声も挙がることとなった。
しかし、サプライズはこれで終わりではなかった。2024年2月に電撃結婚を発表したのだ。大谷選手のプライベートについては長らく謎に包まれており、突然の報告に野球ファンたちは大いにどよめくこととなった。お相手については当初、「日本人女性」としか明かされていなかった。しかし……
3月15日、MLBワールドツアーのため韓国に向かった大谷選手は、Instagram上で妻とのツーショットを初公開。お相手は元バスケットボール選手の田中真美子さんだと明らかになった。
写真:韓国の仁川国際空港に到着した田中さんと大谷選手
ところが、米国のメディア各社は3月20日、大谷選手の通訳を長年務めてきた水原一平氏が球団を解雇されたと報道。水原氏は違法賭博に関与し、その借金を返済するために大谷選手の口座から450万ドル(およそ6億8,000万円)を胴元に送金したとされている。これについて、大谷選手側は窃盗被害に遭ったとして捜査当局に届け出たようだ。しかし、大谷選手も違法賭博に関与したのかどうかなど、不明な点も多く、NHKによれば大リーグ機構が両者に対する正式な調査を開始したとのこと。
写真右が水原氏
世界の舞台で異例づくしの活躍を続けてきた大谷翔平選手。万が一、本人も違法賭博に関わっていた場合には厳しい処分を科される可能性があるが、今のところそのような事実は報じられていない。ここは捜査の行方を見守りつつ、大谷選手の潔白が証明されることを期待しよう。