パリパラリンピックで多発したメダル剥奪:4年間の努力が水泡に帰した理由とは
多くの観客に感動を与え、閉幕したパリパラリンピック。その一方で、せっかく手に入れたメダルを剥奪され、悲嘆に暮れてしまった選手たちがいる。
各競技の選手たちが障害のレベルによりさまざまな支援機器を使用することから、パラリンピックではオリンピックよりも多くのルールが設けられている。
ルールがより複雑になることで、選手が失格になる可能性も増えてしまう。たとえルールを破るつもりがなかったとしても、時にはメダル剥奪という悲劇が起こることもある。
オーストラリアのパラリンピック選手ジャリド・クリフォードは、男子5000メートル(視覚障害T13)決勝で獲得した銅メダルを剥奪されてしまった。
米紙『ニューヨークポスト』によると、ランナーと伴走者はレース終了まで、長さ50センチメートルで両端に持ち手が付いた「テザー」と呼ばれる伴走ロープを掴んでいなければならなかったそうだ。
国際パラリンピック委員会によると、クリフォードは、レース終盤、ゴールラインを通過する直前で伴走者のマット・クラークと繋がれていたテザーを放してしまったそうだ。
リトアニアのウェブメディア「Bored Panda」によると、クリフォードは次のように語ったという。「伴走者のマットを含め、みんなが全力を尽くしてサポートしてくれました。何か理由があるのは確かだと思いますが、どうして失格になったのか今も分かりません」
同選手は自身のインスタグラムアカウントでこう振り返った。「今日、重大なミスを犯してしまったことは本当にショックです。テザーで伴走者と繋がっていることは基本的なルールだったのに、最後の数メートルで放してしまったことを後悔しています」
厳格なルールによってメダルを逃したのは、クリフォードだけではない。ポーランドのロザ・コザコフスカは、女子こん棒投げ(脳性まひF32・座位)で金メダルを剥奪された。
31.30メートルという世界記録を樹立したが、ブラジル代表がコザコフスカの使用器具に関して異議を申し立てたため、メダル授与式が途中で打ち切られることとなった。
国際パラリンピック委員会は、コザコフスカが協議中に頭部を支えるために使用していたクッションの大きさが規則違反と認定。ポーランドパラリンピック委員会が反論したものの、委員会の判断が覆ることはなかった。
英紙『デイリー・ミラー』は、ポーランドパラリンピック委員会が「残念ながら国際パラリンピック委員会の下した決定は私たちにとって不利な内容でした。しかしながら、この結果を受け入れます」と述べたと報じている。
イタリアのパラリンピックボート選手、ジャコモ・ペリニは、ローイング男子シングルスカル(運動機能障害PR1) で銅メダルを剥奪された。
レース中に「通信デバイス」が発見された結果、ペリニは失格となったのだ。
英紙『デイリー・ミラー』によると、レース中に携帯端末やトランシーバーを使用することは規則違反であり、メダル剥奪は妥当な判断だったようだ。
ペリニが失格となった後、イタリアのボート協会は声明を発表。レース前にボートから携帯電話を取り出すのを忘れていたとのことだ。
イタリアボート協会の声明は以下の通りである。「ローイング男子シングルスカル(運動機能障害PR1)決勝で、ジャコモ・ペリニ選手がレース中に通信機器を使用していたことが発覚し、規則28条および規則28条の付則R2に違反しました。その結果、失格処分が下されました」