フランスの女子水泳チャンピオン、カミーユ・ムファが25歳で急逝
プロスポーツ選手は、現役時代にすべてを犠牲にしてスポーツに情熱を傾け、引退してからゆっくりと人生を楽しむことが多い。
しかし、たとえば米バスケットボール界の伝説コービー・ブライアントのように悲劇的な事故に遭い、引退後の人生を謳歌しきれなかったアスリートもいる。
フランスの水泳史上もっとも偉大な選手の一人であるカミーユ・ムファも、残念ながら現役引退から間もなく還らぬ人となってしまった。天才少女と呼ばれた彼女の人生を振り返ってみよう。
カミーユ・ムファは10代で200メートル個人メドレー選手として水泳の才能を開花させた。2005年には15歳でフランス選手権の舞台に立って大きな注目を集めた。
2005年フランス選手権では水泳界のスターであるロール・マナウドゥが保持していた国内最高記録を更新してみごと優勝台にのぼった。
カミーユ・ムファはその後も目覚ましい成長を遂げ、2007年にハンガリー第二の都市デブレツェンで開催されたヨーロッパ水泳選手権に出場し、自身初めてとなる欧州大会のメダルを獲得した。
2008年、ムファは北京五輪で生まれて初めてオリンピック出場を果たした。400m個人メドレーは予選敗退に終わったが、200m個人メドレーで準決勝まで進んでいる。
最高の成績とはいいがたいものの、着実なステップアップを続ける若い選手としては今後に大きな期待ができる結果となった。
実際、短水路(長さ25mのコース)では、2010年にドバイで開催された世界短水路選手権に出場、200メートル自由形でみごと金メダルを手にした。
2010年に上海で行われた世界選手権では200メートル自由形と400メートル自由形の2つで表彰台に上がり、銅メダルを受け取った。
カミーユ・ムファのキャリアが頂点を迎えたのは2012年夏に開催されたロンドン五輪だ。フランスの若手選手として世界中の人々から熱い視線を浴びることになった。
カミーユ・ムファがロンドン五輪で達成した記録は次の通りだ:400メートル自由形で金メダル(タイム4分01秒45)、200メートル自由形で銀メダル(タイム1分55秒58)、4×200メートルフリーリレーで銅メダル。
2012年ロンドン五輪での成績は、ほかの多くの水泳選手を大きく上回るた偉業だといえる。しかし、2014年に若干24歳で引退を宣言。
カミーユ・ムファは現役を引退することで新たな人生に足を踏み出した。幼い頃から長年にわたり、世界を相手に戦えるようなレベルを維持することは並大抵なことではない。カミーユは静かで落ち着いた暮らしを求めていたのだ。
2015年、現役選手や引退したトップアスリートが出演するフランスのリアリティ番組『ドロップド』に出演が決まり、撮影のためアルゼンチンへ渡った。
アルゼンチンを訪れていた2015年2月9日、カミーユ・ムファは他のフランス人アスリート、フローレンス・アルソーやアレクシ・ヴァスティンと共にヘリコプターに乗り込んだ。しかしこのヘリコプターは空中でほかのヘリコプターと衝突、生存者ゼロという大惨事が起こった。
ヘリコプター事故に遭ったとき、カミーユ・ムファはまだ25歳という若さだった。フランスのスポーツ史に輝かしい記録を打ち立てた若きアスリートは前年夏に引退を宣言し、やっと人生を謳歌できるようになったばかりだったのだが。カミーユ・ムファの冥福を祈りたい。