五輪新種目のブレイクダンスで金メダルを狙う「Shigekix」こと半井重幸選手
7月26日に開幕するパリ五輪から、ブレイクダンス、あるいはブレイキンが新しく競技種目に加わる。今回はそのオリンピック初代王者を狙う、ダンサーネーム「Shigekix(シゲキックス)」こと半井重幸選手(22歳)をおっていこう。
ブレイキンとはアクロバティックな動きを取り入れたダンスの一種で、1970年代初頭のニューヨークで、若者たちのストリート文化から生まれた。ブレイクダンスとも呼ばれている。
半井選手は2002年3月に大阪府で生まれた。同じくブレイクダンサーでAYANEとして知られる姉の影響を受け、7歳の時からブレイクダンスを始める。
所属する「TEAM G-SHOCK」のオフィシャルサイトによれば、11歳の時から海外の大会に挑み始め、無敵の快進撃で世界大会のジュニア部門を総なめにしたという。
画像:instagram,@bboyshigekix
中学生になる頃には両親が付き添うこともなく、一人で海外に赴いては優勝を重ねていた。そんな半井選手の目標は唯一無二の存在になることだと『産経新聞』が伝えた。
同紙によれば、半井選手のベースは大阪にあるストリートダンスの聖地、ポンテ広場でつくられたという:「誰でも参加できるので、集まる人が毎日違うんです。その日に誰かが持ってきた音楽をスピーカーで流し、みんなで練習する感じです」
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ダンサーといってもダンスだけで生計を立てるのは難しく、勤めをもっている人も多い。ポンテ広場では仕事を終えたダンサーたちが集まって練習をしていた。半井選手はそんな大人たちに混ざり、夜の9時頃から0時頃まで練習に明け暮れた。そのため、幼い頃は両親が付き添いや送り迎えなどのサポートをしてくれたという。
ジュニア部門ではなく一般ソロ部門で初めて優勝を飾ったのは13歳の時。2015年の世界大会「New Taipei Bboy city」を最年少で制した。
ブレイクダンスにおける世界最高峰の大会は、2004年から開催されている「Red Bull BC One」だ。2017年9月、この大会に15歳で出場を果たした半井選手は、最年少出場記録を更新する。
2018年10月、ブエノスアイレスで開催されたユース五輪で、ブレイキンが初めてスポーツ競技に採用された。試合は1対1の対戦形式で行われ、技術、表現、構成などの総合点で優劣をつける。
ブレイキンは4つのスタイルで構成される。立って踊る「トップロック」、屈んだ状態で地面に手をつき下半身を動かす「フットワーク」、スピンなどのアクロバティックな動きをする「パワームーブ」、音に合わせて動きを固める「フリーズ」だ。これらのスタイルを組み合わせ、いかに独創性のあるダンスを生み出すかが勝利の鍵となる。
金メダルの最有力候補として挑んだユース五輪で、半井選手は銅メダルに終わってしまう。試合後に出演した「テレスポ」で悔しさをぶちまけた:「負けたことがスタートになるかなと思いました。逆に今は良かったかなと思っています。敗北を経験したほうが強くなる」
画像:instagram,@bboyshigekix
悔しさをバネに、ダンスの練習だけでなく全身の筋肉を鍛えるトレーニングにも力を入れた。強靭な肉体を手にしたことで、2020年の「Red Bull BC One world final」を弱冠18歳で制覇する快挙を達成。世界最高峰の大会を史上最年少で制した。
Redbullのサイトによれば、半井選手の強みは高速・高精度のパワームーブと、リズム感や安定感に秀でるフリーズだ。本人は自身のスタイルを「音楽性・複雑なパターン・爆発的なパワームーブのブレンド」と表現しているという。
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2023年、全日本選手権で3連覇を成し遂げ、これまでの国際大会で50近くの優勝を重ねていた半井選手が、パリ五輪代表の座を手にした。
パリ五輪で唯一の新種目となるブレイキン。大きな注目が集まる中、栄えあるオリンピック初代王者の座を目指し、半井選手が突き進む。