プーチン大統領肝入りの国際スポーツ大会、無期延期が決定
今年9月にロシアでは、国際スポーツ大会の記念すべき第一回大会が開催される予定だった。しかし、その開催はまず来年に延期され、その後さらに無期延期が決まった。一体どういうことだろうか?
「フレンドシップ・ゲームズ」と銘打たれたその国際スポーツ大会は、ロシア政府が発案したものだ。ロシアのアスリートたちがオリンピックをはじめとする国際大会から締め出されたことから、それならば自国開催の国際競技大会を新たに創ってしまおうと政府は考えたのだった。
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したのは、2022年2月のことである。以降、西側諸国はロシアに対してさまざまな制裁を加え、それと並行して各国のスポーツ大会主催者、国際競技連盟といったスポーツ界も、ロシアの選手が同国代表として国際大会に出場することを禁止した。その結果、ロシアの選手は今夏のパリ五輪では、国を代表しない「中立な立場の個人アスリート」として参加することになった。
そこでロシアが考案したのが、自国開催の国際スポーツ大会「フレンドシップ・ゲームズ」だった。あちらでは戦争をしながらこちらでは「フレンドシップ」という語を掲げるとはいささか奇異な話だが、ともかくもこの大会は、友好国から選手や関係者を招き、2024年9月15日から29日にかけてモスクワとエカテリンブルクで開催されるというところまで決まっていた。
しかし、事は筋書き通りには運ばなかった。今年7月、「フレンドシップ・ゲームズ」実行委員会が公式声明で述べるには、「幾人かの選手や国際競技連盟と話し合いを続けた末に」、大会の延期を政府に進言するに至ったという。政府はその進言を容れて、来年への延期を決めたのである。
さらに12月初め、プーチン大統領は「フレンドシップ・ゲームズ」の開催を無期延期する大統領令に署名し、その旨がロシア連邦政府の公式ウェブサイトで発表された。来年の開催も現実的ではなくなったのだ。
オンライン紙『ザ・モスクワ・タイムズ』はこの間の事情を推し量り、選手集めが難航しているのではないかと見ている。同紙によると、多くのアスリートがスポーツ界からの制裁を恐れ、同大会への参加を見合わせているからだという。実際、国際オリンピック委員会(IOC)は、「フレンドシップ・ゲームズ」が五輪憲章に違反するとして、同大会に参加しないよう各国に呼びかけている。
そもそもプーチン大統領は「スポーツ国際協力の新しい形」のための叩き台として、この「フレンドシップ・ゲームズ」を提案したのだった。現行のオリンピックはもはや「古い形」というわけである。しかし、どんな形であれともかくも大会を断行する、というわけにもいかないのが現状のようだ。
「フレンドシップ・ゲームズ」実行委員会は、当初5,500人程度のアスリートの参加を見込んでいたという。その記念すべき第一回大会では、20競技が実施される予定だった。
しかし蓋を開けてみると、その見立ては楽観的に過ぎたことが明らかになったようだ。ロシア政府は同大会への参加選手に対して460億ルーブル(約680億円)を分配すると請け合っていたのだが、今回の場合、お金はさほど物を言わなかったらしい。
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