メッシの笑顔はどこへ?:カタールW杯で初戦黒星を喫したアルゼンチン
サッカーワールドカップ・カタール大会の1次リーグで、優勝候補のひとつとされたアルゼンチンが、サウジアラビアに1対2で逆転負けするというまさかの出来事が起こった。
アルゼンチンは1990年のイタリア大会以来、ワールドカップ初戦で敗北したことはなかった。1990年大会の初戦相手はカメルーンで、最初でつまづいたもののアルゼンチンは順調に勝ち上がり、決勝のドイツ戦で敗れて準優勝に終わっている。この歴史は繰り返されるのだろうか。
世界ランキング3位のアルゼンチンが同51位のサウジアラビアに1対2と逆転負けした。サウジアラビア代表は格上の相手に物おじせず果敢に挑み、フィジカルでも相手を上回る強さを見せた。
「グリーンファルコンズ」の異名をとるサウジアラビア代表に歴史的勝利をもたらしたのは3人の英雄たちだ:各1得点を挙げたFWサレー・アル・シェフリとMFサレム・アル・ドサリ、そしてゴールキーパーのモハメド・アルオワイスだ。
リオネル・スカローニ監督率いるアルゼンチン代表がまさかの初戦黒星となった。"戦犯"としてリオネル・メッシに加えロドリゴ・デ・パウルやニコラス・オタメンディの名が挙がっている。
アルゼンチン敗北の衝撃は大きく、この試合で1得点を挙げたスーパースターのリオネル・メッシでさえ、敗戦責任者の一人としてバッシングの憂き目にあっている。
試合開始後10分、アルゼンチンにVAR判定によるペナルティーキックのチャンスが訪れ、メッシが今大会におけるアルゼンチン代表の初ゴールを決めた。
オランダ出身の副審パウルス・ボーケルがスロベニア出身のスラヴコ・ヴィンチッチ主審に対し、アルゼンチンMFパレデスを倒すような動きがあったことを報告。VAR判定により、アルゼンチンにペナルティキックが与えられたのだ。
ペナルティキックで11メートルの距離からきっちりとゴールを決めたメッシ。これまでワールドカップ5大会に出場し、2010年大会を除く4大会で得点を挙げている。これはペレ、ゼーラ、クローゼの4大会得点に並ぶ成績であり、現在それを上回るのはロナウドの5大会連続得点だけだ。
今回のカタール大会から「半自動オフサイド技術」が採用されている。それによりオフサイドの判定がとられ、前半だけでアルゼンチン代表のラウタロ・マルティネスの2点、メッシの1点が取り消されることになった。
前半は明らかにアルゼンチンが優位に立っていたが、メッシのPKによる得点後は追加点を奪えず1対0で休憩を迎えた。
後半、試合の流れが一変した。猛攻を開始したサウジアラビアが後半3分で同点ゴールを奪い、直後の7分に2点目を挙げてスコアをひっくり返したのだ。
サウジアラビアの1点目を挙げたのはサレー・アルシェフリ。アルゼンチンDFクリスティアン・ロメロをかわして左足でシュートを決めた。2点目はMFサレム・アルドサリが鋭いシュートを相手ゴールに突き刺し、スタジアムに詰めかけた母国のサポーターたちを沸かせた。
2得点を奪われたアルゼンチンには、まだ残り時間38分とロスタイムがあった。しかし、メッシに余裕は見られなかった。メッシがピッチで笑顔を見せないとき、それはチームに何か問題が発生していることを意味する。そして、サウジアラビア戦でメッシに笑顔が戻ることはなかった。
ワールドカップ5回出場という史上最多記録に並んだメッシだが、アルゼンチンのスーパースターの力をもってしてもサウジアラビア戦のスコアを覆すことはできなかった。
サウジアラビアの選手はフィジカルの強さで知られている。サウジ代表の強固で高いディフェンスラインを前にしたアルゼンチンは、ついにそれを突破することができなかった。
果敢な攻撃と粘り強い守備のサウジアラビアに黒星を献上したアルゼンチン。波乱の幕開けとなったが、次のメキシコ戦は2対0と確実な勝利を手に収めている。今後の活躍に期待したい。