ライアン・メイソン:瀕死の重傷を負った選手時代から最年少監督となるまで
2023年4月、プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーFC暫定監督クリスティアン・ステッリーニの解任を受け、31歳の元イングランド代表ライアン・メイソンが暫定監督に就任した。6月にアンジェ・ポステコグルー が正監督に就任するまでの重要な期間、みごと代役を務めて大きな注目を浴びている。
暫定監督のもと、トッテナムはプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦を2-2と引き分け、リバプール戦では4-3で敗れたものの3-0の劣勢から追い上げ3-3に追いついている。メイソンは選手たちをふたたび奮い立たせることに成功したようだ。
ライアン・メイソンは選手時代にトッテナムのミッドフィールダーとして活躍し、現役引退後はアカデミーのコーチに就任した。2021年、ジョゼ・モウリーニョ監督がシーズン途中で解任されるとライアン・メイソンは初めて暫定監督を任されている。
2021年にモウリーニョ監督の後を受けてトッテナムの指揮を執ることになったメイソンは28歳、プレミアリーグ史上最年少監督となった。若手にもかかわらず落ち着いた監督ぶりで大きな注目を浴びている。
2023年3月、アントニオ・コンテ監督が辞職するとイギリス出身のクリスティアン・ステッリーニが暫定監督に就任。しかし1か月で解任されたためふたたびライアン・メイソンが暫定監督に指名された。
輝かしいキャリアを歩んでいるようにみえるメイソンだが、自身はこの若さで監督になることは想定外だったようだ。彼のトッテナム選手時代やイングランド代表経歴、そして30歳を前にトッテナムの暫定監督になるまでの道のりを見てみよう。
2008年、メイソンはトッテナム・ホットスパーFCの下部組織からトップチームにデビューした。しかしその後、キャリアが軌道に乗るまで時間がかかった。6年契約の中で8回のローン移籍を繰り返している。
2014年、スウィンドン・タウンFCで最後のローン移籍後、メイソンはトッテナムのプレシーズアメリカンツアーに参加。マウリシオ・ポチェッティーノ監督に良い印象を残し、トップチーム入りすることになった。
トッテナムのトップチームで主力選手のひとりとなったメイソンは、リーグ戦とカップ戦で37試合に出場。3対2で勝利したスウォンジー・シティ戦では、プレミアリーグ初ゴールを決めた。
2015年、チェルシーとのリーグ杯決勝で先発出場したメイソン。チームは敗れるも、メイソンは印象に残るパフォーマンスをみせた。さらに、2015年3月31日にはメイソンは初めてイングランド代表としてピッチに立ち、イタリアを相手に戦っている。
初めてとなる代表戦、メイソンは試合終了まで残り16分の場面で登場。途中出場の直後にメイソンがアシストした球をアンドロス・タウンゼントが決め、1-1の同点打に貢献した。
トッテナムでの2年目シーズンは、リーグ戦で8試合の先発出場にとどまり不本意な結果に終わった。メイソンはプレミアリーグでコンスタントに試合に出場できることを期待し、ハル・シティAFCに移籍。
2016-17シーズンの途中、メイソンはガリー・ケーヒルとのピッチ上の競り合いで頭蓋骨を骨折するという大けがを負った。
頭部損傷の手術を受けて一命をとりとめたメイソンは、リハビリを経て2017年中にもプレーに復帰することを目指していた。
foottheball.com によれば、手術後のメイソンは頭蓋骨に14枚の金属プレート、それを固定する28本のネジ、さらに頭にある15㎝の傷跡には45本のステープル針を刺していたという。ことの深刻さを考えれば、ふたたびピッチに立つことは危険だという判断が下された。
現役引退を表明したメイソンはトッテナムのコーチングスタッフとしてU19チームを担当、そしてU17からU23までの選手育成の責任者を務めた。
2021年、モウリーニョ監督解任後に初めてトップチームの暫定監督となったメイソンは、みごとトッテナムをEFLカップ決勝へと導いた。決勝戦でマンチェスター・シティに敗れたものの、リーグ戦5試合中3試合で指揮を執り大きな印象を残した。
ワールドクラスの才能豊かな選手が揃うトッテナム。メイソンは強力な守備を固め、ハリー・ケインらが活躍できるシステムの構築に取り組んだ。瀕死の事故と大けが、それに伴う現役引退という苦難を乗り越え、監督の道を歩むメイソンの今後の活躍に期待しよう。
–