上半身だけで生まれて:総合格闘技にデビューしたザイオン・クラーク

上半身だけのアスリート
「尾部退行症候群」
ギネス世界記録
過酷な人生
里親の家をたらい回し
強さと適応能力
オールアメリカン・レスラー
ユージン・マーレーとの初戦
新たなキャリアのスタート
観衆のためのショー
日々自分を奮い立たせる
全審判一致の判定勝利
3ラウンドで一貫して優位に立つ
30-27の判定勝利
最高の指導者たちと行ったトレーニング
ドキュメンタリー制作
より高い目標に向かって
上半身だけのアスリート

ザイオン・クラークは生まれた時から下半身がない。しかし、自ら定めた目標を達成すべく弛まぬ努力を続け、総合格闘技の世界でプロデビューに成功し、さらなる高みを目指している。

 

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「尾部退行症候群」

クラークは「尾部退行症候群」という先天性の稀少疾患を抱えており、上半身だけで生まれてきた。こうしたハンデをはねのけクラークはオールアメリカン・レスラーの座に輝いたばかりか、複数の競技でギネス世界記録を達成した。

ギネス世界記録

2021年、クラークは両手だけで走る20m最速記録を達成した。2022年には手を使って跳ぶ「ボックスジャンプ」の最高記録を、そして「3分間のダイヤモンド腕立て伏せ(両手をひし形に組んでプッシュアップする)の最多記録を出し、3つのギネス世界記録を達成という偉業を成し遂げた。

過酷な人生

クラークは『フォーブス』誌のインタビューでこう語っている:「これまできわめて厳しい道のりを歩いてきました。人生では非常につらい状況に置かれたことも、過酷な経験をしたこともあります」

 

里親の家をたらい回し

「産みの親に見捨てられた後、17年にわたり9つの里親家庭をたらしまわしにされました」とクラークは明かしている。

強さと適応能力

クラークは過酷な子ども時代に高い適応能力を身につけたが、そのおかげでどんな困難にも立ち向かい、目標を達成する方法を身に着けられたという。だからこそ、これほど輝かしい実績を挙げてきたのかもしれない。

オールアメリカン・レスラー

クラークはケント州立大学でオールアメリカン・レスラーに輝き、陸上競技でも2度の州チャンピオンとなった。「両手最速の男」とも呼ばれる彼が、新たに挑戦を始めたのが総合格闘技(MMA)だ。

ユージン・マーレーとの初戦

2022年12月、クラークは米国カリフォルニア州で行われた総合格闘技コンペである「Gladiator Challenge」大会でプロデビューを果たし、ユージン・マーレー(プロMMA0勝4敗)と対戦した。

新たなキャリアのスタート

本大会出場を前にしたクラークは、これがプロ総合格闘技家としてのスタートになると語っていた。

観衆のためのショー

クラークはロサンゼルスの『Fox 11 News』にこう語っている。「これは私にとって新たなプロフェッショナルのキャリアの始まりとなります。対戦相手を倒し、観客を喜ばせるようなショーを行うために参加を決意しました」

日々自分を奮い立たせる

「私は足のないアスリートだから特別なのではありません。特別であるのは、行動力があり「言い訳をしない」 という信条のもとに、毎日自分自身を奮い立たせているからです」と続けた。

全審判一致の判定勝利

総合格闘技家としてのプロデビューとなった対ユージン・マーレー戦、クラークは優位に立って審判のカードを独占し、全審判一致の判定勝利でマーレーを下した。

 

3ラウンドで一貫して優位に立つ

3ラウンドを通し、クラークは豊富なレスリング経験をもとに、四肢のあるマーレーを圧倒したのだ。

 

 

30-27の判定勝利

30-27の判定が出たとき、クラークは後方宙返りでコーナーに戻って観客を熱狂させた。なかには会場を沸かせるこうしたパフォーマンスを期待していた観客もあったようだ。

最高の指導者たちと行ったトレーニング

「クラークはMMA参入を非常に真剣に捉え、クイントン・ジャクソン、マイク・ペリー、アンデウソン・シウバといった元UFC(米国の総合格闘技団体)のスターたちとトレーニングに励んでいました」と『Mail Online』のジャーナリスト、ジェームス・クーニーが伝えた。

ドキュメンタリー制作

生まれつき下半身がないという大きなハンデにもかかわらず、強靭な精神力と楽観主義で数々の偉業を成し遂げたザイオン・クラークの半生は、Netflixの短編ドキュメンタリー『ザイオン』にまとめられた。2019年開催の第91回アカデミー賞でも取り上げられている。

より高い目標に向かって

自らを「生まれつきのファイター」¥とするクラークは、MMAに限らず今後もスポーツ界で目覚ましい活躍を続けていくことだろう。あきらめを知らない上半身アスリートから目が離せない。

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