名将ペップ・グアルディオラの知られざるエピソード
6月10日にUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦がイスタンブールで行われた。拮抗する試合となったが最終的にペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティがインテルを制し、みごと初優勝を飾った。
ペップ・グアルディオラはそのキャリアを通じFCバルセロナ、FCバイエルン・ミュンエン、マンチェスター・シティFという欧州3か国の名門を率い、それぞれのチームのポテンシャルを最大限まで引き出してみせた。
では、ペップ・グアルディオラはどのようにして最高の監督への道を拓いていったのだろう。
はじまりは、FCバルセロナだった。グアルディオラはセカンドチームの監督だったが、辞任したフランク・ライカールトの跡を継いで2008年に同クラブのファーストチームの監督に就任したときだった。
当時彼は37歳。給与はワンシーズンで100万ユーロという契約だった。下部組織を監督した経験はあったが、ファーストチームを率いるのは初めてのことだった。にもかかわらず、ペップは就任早々、大胆にもロナウジーニョとデコの獲得に乗り出した。
ペップの決断が正しかったことは1年目のシーズンで早くも明らかになった。2008-2009年シーズン、チームはチャンピオンリーグ、ラ・リーガ、コパ・デル・レイを制覇し、スペインサッカー史上初の3冠に輝いたのだ。ペップの快進撃はそこから始まった。
レンガ職人の父ヴァレンティ、専業主婦の母ドロールスの息子として、ペップはバルセロナ近郊の小さな町サンパドーで幼少時代を過ごした。その才能は早くから開花した。
ペップ・グアルディオラはFCバルセロナの監督を4年つとめたのち、愛着のあるクラブを後にした。彼が率いた時代のFCバルセロナは、その歴史のなかでも最も光輝ある時代となった。獲得したタイトル数や得点数が突出しており、選手たちにも世界最高のクラブでプレーしているという高い誇りがあったのだ。
特筆すべきことに、ペップ・グアルディオラは監督として、レアル・マドリードの本拠地であるサンティアゴ・ベルナベウ・スタジアムでの試合で相手に負けたことがない。
FCバルセロナを去ったペップが監督として着任したのはFCバイエルン・ミュンヘンだった。3シーズンにわたりバイエルンを監督し、チームをブンデスリーガ連続優勝へと導くも、チャンピオンズリーグではタイトルを手にすることはできなかった。それがもとでペップは監督を解任されることになる。
バイエルンの監督就任時の記者会見でのこと。挨拶を述べる段になって、ペップは使い慣れたスペイン語ではなく、ほぼ完璧なドイツ語で話し始めた。これにはみんなあっと驚いた。ファンにとって今でも懐かしく思い出される一幕である。
このエピソードは、ペップ・グアルディオラの人柄をよく表している。つねに現状に飽き足らず、几帳面で、進化するための努力を惜しまない完璧主義者、それがペップだ。彼のメソッドがうまくいくこともあればうまくいかないこともある。ともあれ、はっきりとした根拠にもとづき、自分の行動を論理的に組み立てていることは確かである。
2016年の夏、ペップ・グアルディオラはマンチェスター・シティFCの監督に就任した。彼はすぐにチームに馴染んだ。あるいはFCバルセロナ以上にしっくりきたのかもしれない。ペップの就任以来、マンチェスターはプレミアリーグ優勝を4回経験したのだった。
ペップ・グアルディオラは監督としてのキャリアを通じて32のタイトルを獲得しており、これは歴代2位の記録にあたる。とはいえ、アレックス・ファーガソン監督の大記録49タイトルにはまだ遥か及ばない。
スポーツ専門チャンネル『ESPN Brazil』のインタビューで、マンチェスター・シティとの契約が2023年に終了した後は代表監督を希望しているとペップは語った。その夢が実現するか、あるいはシティの監督を続投することになるのかはまだわからない。
私生活はどうかというと、ペップは控えめなふるまいとプライバシーの確保とに一貫して重きを置いている。とりわけ長年連れ添っているパートナー、クリスティーナ・セラについてはコメントを控えている。
ペップ・グアルディオラとクリスティーナ・セラが出会ったとき、ペップは18歳だった。2人は2014年にバルセロナで結婚した。その後モロッコのマラケシュで、60人のゲストを招いて2回目の結婚式を挙げたという。デジタル媒体の新聞『Vanitatis』が報じた。
グアルディオラ夫妻には、マリア(2001年生まれ)、マリウス(2003年生まれ)、ヴァレンティーナ(2008年生まれ)という3人の子どもがいる。
それから政治信条について。ペップ・グアルディオラの人生において、政治はかなりのウェイトを占めている。カタルーニャ独立運動の機運が高まったとき、彼はその運動への共感を隠すそぶりも見せなかった。
2015年7月、彼はカタルーニャ自治州議会選挙のために設立された選挙連合である「ジュンツ・パル・シ」の候補者リストに名を連ねた。
イングランドのフットボール・アソシエーションは、カタルーニャの政治家が2018年に投獄されたことへの抗議を示す黄色いリボンを身につけたことで、ペップ監督に2万ポンドの罰金を科した。
今期のチャンピオンズリーグでは並みいるライバルを押しのけ準決勝まで勝ち上がり、レアル・マドリードと対峙。昨年王者に対し4-0という圧倒的な勝利を収め、決勝進出をものにした。
フットボールにおける自らの信念に忠実でありつづけたペップ・グアルディオラは、それにより世界最高の監督となるに至った。現状に甘んじず、さらに進化を続けるペップからまだまだ目が離せない。