事故から10年以上が経過:2013年にスキー事故で倒れたミハエル・シューマッハの現在の容態は
レーシング界でまさに夢のようなキャリアを築いたシューマッハ。F1界に不滅の名声を刻んだ彼だが、いまなんと悪夢のような状況に陥っている。
ミハエル・シューマッハはF1で7度の優勝歴を誇り、まさに革命児だった。そんな彼が2012年に引退したときには、彼の業績を乗り越えるのは不可能とも思えたものだった。
多くの人が証言しているが、シューマッハは私生活でもさまざまなスポーツに興じたいと思っていたらしい。1991年以来ほとんどの時間をF1に捧げてきたため、引退時にはその気持ちもひとしおだった。
だがそんな彼の生活も、2013年12月に悲惨な大事故に遭い、脳に障害を負ったことで一転してしまう。
事故が起きたのは2013年12月29日、フレンチアルプスのスキー場メリベルで息子のミックといっしょに滑っているときのことだった。
シューマッハはスキーの腕も一流だったが、未整備エリアを滑走中に転倒して岩に頭を打ち付けてしまう。ヘルメットは着用していたものの、頭部に重い外傷を負った。
事故時に出された医者のコメントによると、ヘルメットがなければ死亡していた可能性が高いという。華々しく引退して悠々自適の生活に入ってからたった一年で、シューマッハの生活は一変してしまった。
事故当日、シューマッハはメリベルのスキー場のコンディションに関する不安を漏らしていたという。ネットフリックスのドキュメンタリー、『シューマッハ』の中で妻のコリーナが明らかにした。
コリーナはこう述べている:「メリベルでの事故の直前に、ミハエルが私にこう言ったんです。「雪の状態がよくない。ドバイに行ってスカイダイビングをしてもいいかもしれない」と」
シューマッハの怪我は大変重く、2014年6月まで人工的な昏睡状態に置かれることとなった。
以降、シューマッハは退院して自宅でリハビリをしていたという。だがその様子については世間にはほとんど知らされず、現在の状態についてもわからないことが多い。
だが、妻のコリーナや息子のミック、親友のフィリップ・ストレイフなどから伝えられた情報をもとに推測することはできる。
元F1ドライバーのフィリップ・ストレイフ(写真)は自身も走行中の事故で脊髄を損傷、車椅子を使っていた。ストレイフは惜しくも2022年12月に死去したが、そんな彼がかつて伝えたところによると、シューマッハも麻痺が残り、車椅子を使っていたという。
「シューマッハは以前と比べればよくなってはいます。ですが、回復はたいへん困難です。話すことができませんし、麻痺があるので私のように車椅子を使っています。記憶障害と言語障害があります」とストレイフは2014年に『インディペンデント』紙に語っている。
さいきん、ミハエルの誕生日に、息子のミックが子供時代に父と写った写真を投稿した。ミックにとって最もつらいのは、父親とF1について話せないことだという。
画像:Instagram / @ mickschumacher
自身も父親の跡を継いでF1ドライバーとなったミック。『シューマッハ』でミックは「父と話したいことはたくさんあります。そうできたら最高なのに、といつも考えてしまいます。そのためならなんだって投げうちます」と語っている。
コリーナは現在のミハエルの状態について頑なに秘密を守っているが、それでも日々ミハエルのことを思って「さみしく」なると述べている。だが、同時に、ミハエルの強さに驚かされているとも言う。
「毎日、ミハエルのことを思ってさみしい気持ちになっています。ですがそれは私だけではありません。子どもたちや家族、彼の父親や周囲の人みんながそうです。みなミハエルのことを思っています。それでも、ミハエルはここにいるんです。変わってしまいましたが、ここに」とコリーナは語っている。
コリーナは続ける:「私たちは家で一緒に暮らしています。セラピーもしてますし、ミハエルが回復するためにあらゆることをして、彼の生活が快適なものであるよう努めています。彼に私たちの家族の一員だという絆を感じてほしいのです。そのためなら、私はできることはなんだってやります」