スポーツの現場を変えるAI(人工知能):選手のリハビリ計画からレフェリー代行まで

さまざまな分野で活躍するAI(人工知能)
予測不可能性を駆逐するテクノロジー
売店の管理
競技場の安全
スカウト業務
スカウトの未来
チームの管理
ケガの防止
リハビリのプランニング
試合のプランニング
相手チームの弱点を見破る
シーズンのプランニング
レフェリーの仕事もなくなる?
観客向けのテクノロジー
ファン参加型の技術開発
使用には慎重を要する
さまざまな分野で活躍するAI(人工知能)

目覚ましい勢いで身近なものになりつつあるAI(人工知能)。対話型AIサービスであるChatGPTの登場で文章作成や調べものの常識が覆されたほか、競技スポーツの分野でもさまざまな変化が起こっている。今回は人工知能が変えていくスポーツの現場を見てゆこう。

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予測不可能性を駆逐するテクノロジー

現代のカルチャーにスポーツの占める割合は大きい。テレビのスポーツ番組はしばしば視聴率のトップを誇り、毎年多くのファンが試合に足を運ぶ。スポーツのおもしろさは、やってみないと勝敗がわからないことにある。その予測不可能性はスポーツの生命の源であり、ところが人工知能はその予測できなさ、ランダムな雑多性をいわば無菌化するテクノロジーである。人工知能がさらに進めば、試合の前からその勝敗がかなりの精度で予測できるといった状態が恒常化しかねない。

売店の管理

スポーツ観戦の楽しみといえば、ビールを片手にホットドッグを齧ることだ。人工知能は、売店のストックや従業員のシフト管理にも用いることができる。ビールを飲んでトイレを探す人に最寄りのトイレを案内することも当然できる。

競技場の安全

競技場は昨今だいぶ平和になった。とはいえ、ダフ屋行為はしぶとく残っている。人工知能の顔認証技術によって、繰り返されるダフ屋の入場に制限をかけることができ、非合法の転売行為をブロックすることが可能だ。

スカウト業務

スポーツチームは1960年代から、スカウト業務にコンピューターを使い始めた。その先駆けはダラス・カウボーイズ(NFL)で、ゼネラル・マネージャーを務めていたギル・ブラントがコンピューター化を推し進めた。今日、人工知能はその業務全般をかわりに担ってくれる。数千のデータを参照し、チームにとって最適な選手を教えてくれるのだ。

スカウトの未来

人工知能ツールはとても強力になっており、なかには人工知能を用いてそれぞれのポジションにつき“理想の選手”をマッピングしているチームもある。また、選手の体の動きをトラッキングし、どの選手が将来伸びやすいか判定することも人工知能には可能だ。

チームの管理

スカウト業務に用いられる人工知能ツールは、自チームの選手の管理にも使える。選手の調子が下向きだったり、あるいは好調だったりする場合、人工知能は選手の変化を具体的につきとめ、その変化の理由を分析することもできる。

ケガの防止

全ての選手の動きがトラッキングされてデータ化されれば、人工知能はそれぞれの選手の理想的なポジショニングや動きをはじきだすことができる。実際の動きがその“理想パターン”から外れるときは、選手がケガをする前兆であり、チームは事故を防ぐべく早めに手を打つことができる。

リハビリのプランニング

仮に選手が故障した場合も、人工知能が収集した当人の生体データを使うことで、その人に応じたリハビリ計画を立てることができ、回復のベストな道のりを設定することができる。

試合のプランニング

今日ほとんどのスポーツで、何らかのコンピュータモデルを使用した試合の組み立てが行われている。人工知能を使えば、さらに広範な情報を取り込むことが可能で、試合のシナリオをさらに細かいところまで詰めることができる。相手を出し抜く仕方を特定することもできる。データは多ければ多いほどいい。

相手チームの弱点を見破る

どんなにすばらしいチームにも、つけいる隙は必ずある。その弱点はちらりとしか現れず、人間の力で捉えるのは無理だとしても、人工知能の恩恵に与かればその弱みを見つけ、願わくは効果的につけこむことも可能である。人工知能は膨大なデータを瞬時に走査し、堅固な守備の微かなほころびを指し示すことができるのだ。

シーズンのプランニング

多くのスポーツチームにとって、シーズンを通してのローテーションの重要性は論を俟たない。人工知能は、めいめいの選手がベストコンディションで最大限の力を発揮できるようなプランを立てることができ、それと両立するような仕方で、対戦相手に合わせたフォーメーションを提示することができる。

レフェリーの仕事もなくなる?

すでに多くのスポーツでなにかしらのビデオ判定が導入されており、競技場のレフェリーや審判の仕事を補佐している。さて、そこに人工知能が導入されると、従来のレフェリーや審判は不要になるかもしれない。人工知能は野球のストライクであれサッカーのオフサイドであれ、ほとんど即座にジャッジを下すことができる。ヒューマンエラーはゼロになり、どこまでも非情なジャッジが残る。

観客向けのテクノロジー

今日、スポーツの試合はさまざまなメディアから得ることができ、ファンはますます多くの情報を得つつある。人工知能はその流れを加速させる。例えば、リアルタイムの高度な統計データを提供し、ピッチで起きていることをよりよく理解するための前提知識を観客に授けることができる。私たちはすでにこれをAmazonビデオが配信する「サーズデーナイトフットボール」のX-Rayテクノロジーで目にしている。

ファン参加型の技術開発

試合観戦者がなにか疑問を抱いたときも、人工知能がリアルタイムで質問に答えることが可能だ。具体的には、放送局やスポーツチームが人工知能を搭載したチャットボットを作成し、試合にまつわる質問に自動で答えるということが考えられる。

使用には慎重を要する

人工知能は現代が生んだ驚異だ。慎重に用いるならば、スポーツにとっても益するところが大きいだろう。だが、そもそもの楽しみが損なわれないよう注意する必要がある。スポーツがもたらす原初的なよろこびを失わないために。

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