世界で人気の「F1」がオリンピック競技になれない理由
8月11日、17日間にわたる熱戦を終えたパリ・オリンピックが閉幕した。パリではブレイキンが新種目として注目を浴び、みごと日本代表AYUMI選手が初代女王に輝いた。
2021年に開催された東京大会ではケートボードを始めとする4つの競技が加わるなど、五輪競技は毎回見直しが行われている。では、世界中で人気のモータースポーツであるF1は、どうしてオリンピック競技に含まれていないのだろうか。
ウェブサイト『ブラックブック・モータースポーツ』によると、2022年のF1の視聴者数は7000万人を超えているという。これほどまでに人気の高いF1 だが、オリンピック競技に選ばれないのには理由がある。
オリンピックの目的は、主としてアスリートたちが並外れた努力で人間の肉体の限界に挑むことにあると言える。それとは対照的に、F1の結果はドライバーの技量もさることながら、マシンの性能に大きく依存している。
もちろん、F1ドライバーも人間の能力の限界に挑戦するアスリートには違いない。しかし、オリンピックが人間の肉体的能力に焦点を当てているのに対し、F1は人間とマシンが一体となって結果を追求するものだ。
『ブラックブック・モータースポーツ』によると、2012年に国際オリンピック委員会の元会長ジャック・ロゲ氏は、オリンピック競技にF1を含める案をたちどころに却下したという。
「率直に言って我々の考えでは、オリンピックは使用する装備やマシンを競うものではなく、選手同士が競いあうものなのです。したがって、F1には大きな敬意を払っていますが、オリンピック競技に含めることはないでしょう」
もしF1がオリンピック競技に採用された場合、予算や物流の問題も大きな懸念点となる。レース用のトラックの建設や維持、撤去には莫大な予算が必要だ。さらに、車や機材すべてを輸送する物流コストも莫大になる。
モータースポーツ専門サイト『クラッシュ』によると、F1の各チームは約1,500トンの機材を保有し、世界各地で開催されるレース会場にマシンを運ぶために1億ドル以上を費やしているという。
男女平等はオリンピックの重要な理念であり、すべてのスポーツに男子と女子の両方のカテゴリーがある。一方で、F1では男女平等は十分進んでおらず、現在まで女性のF1ドライバーはほとんどいない。
オリンピックの本質的な理念や、物流コストの問題、さらに男女平等の観点を考えると、F1がオリンピック競技になることは難しいだろう。