1日に1万カロリー摂取:競泳の「怪物」マイケル・フェルプスは食生活も怪物級
五輪史上、最多のメダルを獲得し、「怪物」の異名をとった競泳選手、マイケル・フェルプスを覚えておいでだろうか。オリンピックで合計23個の金メダルを獲得するという偉業を成し遂げたことで知らられているが、その裏には1日に1万キロカロリー摂取する怪物級の食生活が隠されていた。
では、栄養学の観点からも注目を集める、フェルプスの並外れた食生活を見ていこう。
身体活動量が中程度の成人男性にとって1日のエネルギー摂取量は約2,500キロカロリーである。しかし、フェルプスはたった1日で、成人男性4日分の食事に相当するカロリーを摂取していたのだ。
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フェルプスの食事は、パスタやサンドイッチなどのメインに加え、エナジードリンクを含むサイドメニューも充実しており、まるで豪華なビュッフェのようでさえある。
オリンピックの公式Webサイトによると、フェルプスの朝食はチーズやレタス、トマト、フライドオニオン、マヨネーズをたっぷり挟んだ目玉焼きサンドイッチ3枚を平らげることから始まる。その後卵5個分のオムレツ、グリッツと呼ばれるとうもろこしのお粥1杯、粉砂糖をかけたフレンチトースト3切れを摂取するそうだ。多くの人にとっては1週間分の食事に匹敵するかもしれない。
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フェルプスの驚くべき食生活は、彼が贅沢な朝食にこだわるグルメであるということを表しているわけではない。日々の過酷なトレーニングで必要とされるエネルギー摂取を心がけていたのである。全盛期のフェルプスは1日に約13km泳ぎ、1日約6時間、週6日もしくは7日間トレーニングに励むという生活を送っていた。
水泳はその他のスポーツと異なり全身運動のため、大量のカロリーを消費するのだ。米誌『スイミングスクール』によると、一流の水泳選手は1時間あたり最大1,000キロカロリーを消費するそうだ。フェルプスの厳しいトレーニングスケジュールを考えると、身体を動かすために大量のカロリー摂取が必要だったのも不思議ではない。
フェルプスのトレーニングは長時間に渡り、高強度インターバルトレーニング、筋力トレーニング、長距離持久力トレーニングを組み合わせたものだった。膨大な量のエネルギーを消費するため、フェルプスは大量のカロリーを摂取していたのだ。
フェルプスと比べると、他のアスリートたちのエネルギー摂取量は控えめだ。栄養士のミレイア・セルベラ氏によると、地球上で最速の男ウサイン・ボルトは、トレーニングのピーク時には1日約5,000キロカロリーを摂取していたという。
ボルトのエネルギー摂取量はフェルプスの半分だが、それでも平均的な成人男性の2倍である。ボルトの食事にはタンパク質と炭水化物が含まれ、チキンナゲットとジャマイカの餃子が特にお気に入りだったようだ。
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米『ニューズウィーク』誌が報じたところによると、NFLのラインマンの中には1日に6,000キロカロリー以上を摂取する選手もいるらしい。筋肉量を増やし維持するためにタンパク質を多く含んだ食事内容だが、それでもフェルプスの膨大なカロリー摂取量には及ばない。
マラソンランナーは、激しいトレーニングにもかかわらず、通常は一日のカロリー摂取量を約3,000〜4,000キロカロリーに抑えているそうだ。メインのエネルギー源として複合炭水化物を摂取し、消化不良を起こす可能性のあるタンパク質は控えめにしているらしい。
フェルプスの食生活が注目を集めるのは、その量と種類の多さである。普通の人であればジャンクフードを減らすために栄養士に相談するところだが、フェルプスの食生活にはジャンクフードを含む、ありとあらゆるものが含まれているのだ。オリンピック前の食生活では、ピザやパスタ、エナジードリンク、さらにはチョコチップ入りのパンケーキも頻繁にテーブルに並んでいた。
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2016年、フェルプスは惜しまれながらも引退を宣言。以前と同じようにトレーニングする必要がなくなったため、フェルプスの食生活は劇的に変化した。2022年の米誌『GQ』によると、現在は高負荷インターバルトレーニングに力を入れており、野菜やスムージーを中心とした食生活を送っているそうだ。
「引退後の食事管理に苦労する部分もありますよ。25年間、食べることは私の仕事の一部であり、職業の一部でしたからね。だからこそ、自分の体が何を必要としているかはよく分かります。今はもう、食べ物を無理に食べることはありません」と彼は語った。
「引退後、体重は13~15kg増えて104kgぐらいになりました。食生活を改善すると、気分も大きく変わりましたよ。今までは頭の中がぼんやりしていたけど、意識がクリアになったように感じたんです」
マイケル・フェルプスの独特な食生活は、彼自身にとっても負担の大きいものであり、真似することをおすすめはできないだろう。