F1の天才ドライバーは問題児?:マックス・フェルスタッペンの偉業と問題行動
デビューしたときからF1を制覇することが確実視されていたマックス・フェルスタッペン。しかし、チャンピオンにふさわしい不屈の精神は、ときにピット裏でのトラブルにつながってしまうことも。
「マッド・マックス」ことマックス・フェルスタッペンはデビュー以来、記録を次々に塗り替え続けている。このままゆけば、ルイス・ハミルトンとミハエル・シューマッハが打ち立てたF1世界選手権7度制覇という偉業を上回るのは間違いない。
今のところ、フェルスタッペンの優勝歴は2021年と2022年の2度だ。しかし、2022年の鮮やかな活躍ぶりと彼の年齢を考えれば、伝説となった2人に追いつくのは時間の問題だろう。
マックス・フェルスタッペンがF1ドライバーとしてハンドルを握ったのは、17歳と164日のとき。今のところ最年少記録だ。デビュー戦は2015年、スクーデリア・トロ・ロッソの所属で、カルロス・サインツ・Jrがチームメイトだった。
2015年3月にはマレーシアグランプリに出場、ポイントランキングで最年少記録を更新した。さらに、最年少でラップリーダーになったほか、18歳と225日でグランプリ優勝の最年少記録も塗り替えてしまった。その上、「グランチェレム(ポールポジション・最速ラップ・優勝)」も最年少で達成している。
もちろん、これほどの偉業を達成するには並々ならぬ競争心が不可欠だ。しかし、そのことがあだになってしまうこともある。2022年のブラジルグランプリでは、フェルスタッペンが信頼を置くレッドブルのチームメイト、セルジオ・ペレスと衝突するなど、いざこざは絶えない。
チーム戦略の一環として6位の座をペレスに譲るよう指示されたフェルスタッペンは、あろうことかこれを無視してしまったのだ。この行動にはクリスチャン・ホーナー監督も激怒、『Sky Sports』誌上で「フェルスタッペンはレッドブルより偉いわけじゃない。我々はチームで一丸となって戦っているんだ」と苦言を呈している。
セルジオ・ペレスもまた、『Sky Sports』誌上で「フェルスタッペンが2度の優勝を手にすることができたのは私のおかげだ」とクギを刺した。
しかし、フェルスタッペンはなぜそのような行動に走ったのだろうか?どうやら、2022年のモナコグランプリでセルジオ・ペレスがとったよからぬ戦略に対する仕返しだと見られている。マックス・フェルスタッペンは他人からうけた仕打ちを忘れないタイプの人間なのだ。
しかし、マックス・フェルスタッペンにまつわる論争はすべて、2021年アブダビグランプリの最終戦が発端となっている。このとき、ルイス・ハミルトンは8度目の優勝を視野に万全の態勢でレースに臨んでいたが、フェルスタッペンはこれを打ち破り初優勝を飾った。
ところが、ハミルトンの所属するメルセデスは2件の抗議申し立てを行った。その内容は、セーフティーカー中にフェルスタッペンがハミルトンを追い抜いた疑いがあること、セーフティーカーが去った後の手順が不当だったというものだ。しかし、この申し立てはどちらも却下されることとなった。
しかし、F1専門メディアは、フェルスタッペンがハミルトンと横並びになったときに行く手をふさぐような策に出たと指摘、物議を醸すこととなった。一筋縄ではいかない世界選手権ファイナルとなったが、若きフェルスタッペンにとっては世界選手権初優勝という歴史的快挙だった。
さて、フェルスタッペンとハミルトンという2人のチャンピオンがコースで火花を散らしたのはこれが初めてではない。2021年10月のアメリカグランプリでは、ハミルトンがフェルスタッペンのアタックラップを阻止するなど、因縁のライバル同士なのだ。
しかし、問題はレースそのものではなかった。「マッド・マックス」は無線でルイス・ハミルトンを「あのバカめ」と罵り、中指を突き立てて苛立ちを露わにしたのだ。
「マッド・マックス」にとって幸運だったのは、彼を遥かに上回る問題児たちが最新の話題をさらってくれたことだ。おかげで、フェルスタッペンは不毛な論争とは距離を置き、レースに勝つことに集中できたのだ。
物議を醸すといえば、マックスに幼いころからF1への情熱を植え付けた父、ヨス・フェルスタッペンは暴行騒ぎの常習犯で一度ならず警察のお世話になっている。20代にして年俸2200万ドルを手にする若きチャンピオンに悪影響を及ぼすことがなければよいが……