女子サッカー界でいちばん高くつく選手、キーラ・ウォルシュとは誰か

キーラ・ウォルシュの負傷
デンマーク戦でのひざの負傷
ACLの損傷ではない
「対応策を用意している」
対中国戦は勝利
次はナイジェリア戦
攻撃のキーパーソン
ロッチデール生まれ
競技の世界へ
スポーツ万能少女
技術を磨く
ブラックバーン・ローヴァーズからマンチェスター・シティへ
コーチを驚かせる
「最高のサッカー知能の持ち主」
マンチェスターに引っ越す
負けなしでリーグ優勝
上り調子の活躍
2019年女子ワールドカップ
批判との戦い
コーチに説き伏せられて
UEFA欧州女子選手権の優勝
バルセロナへ移籍
二冠を獲得
これからの展開に注視
キーラ・ウォルシュの負傷

イングランド女子代表のスーパースター、キーラ・ウォルシュのワールドカップ今大会の雲行きは非常にあやしくなった。デンマーク代表を1-0で下した7月28日の試合、MFキーラ・ウォルシュはひざを負傷したのである。

デンマーク戦でのひざの負傷

その負傷が具体的にどういうものかははっきりと公表されていないが、イングランドサッカー協会の報告によると、前十字靭帯(ACL)の断裂でないことは確かなようである。もしACLの損傷であれば、ウォルシュのワールドカップ今大会はこれで終わりになるところだった。

ACLの損傷ではない

「前十字靭帯の損傷ではありません。それ以上のことは申し上げられません」と、イングランド代表のサリナ・ヴィーフマン監督はメディアに語ったと、『ガーディアン』紙は報じている。

「対応策を用意している」

「私たちのチームはかなり強く、すべてのゲームでベストのパフォーマンスを発揮したいと思っています。ウォルシュは試合に出られなくなり、チームは23人から22人になりました。ですが、対応策はあるので、それを実行に移そうと思います」とヴィーフマン監督は語った。

対中国戦は勝利

キーラ・ウォルシュはイングランド代表の予選最終試合の中国戦に出場することができなかった。しかし、イングランド代表はウォルシュの不在を感じさせない試合運びで、中国に6-1で大勝した。とくにローレン・ジェイムズは2得点3アシストの大活躍だった。

次はナイジェリア戦

予選を首位で通過したイングランド代表は、8月7日(月曜日)の決勝トーナメントでナイジェリア代表と対戦する。予選グループで見せたような得点力を、この試合でも発揮できるかどうかが見どころとなるだろう。ナイジェリア代表のディフェンスは岩のように堅固なのだ。予選ではホスト国であるオーストラリア代表を相手に2失点を許しただけで、しかもその試合は3-2で逆転勝利している。

攻撃のキーパーソン

キーラ・ウォルシュのような選手が中盤にいれば、ナイジェリアの鉄壁のディフェンスを前にしても、いろいろなチャンスの作り方が可能になるはずだ。もし欠場を余儀なくされれば、ウォルシュはひどく気落ちすることになるだろう。ウォルシュのこれまでの勢いを考えるとなおさらだ。

ロッチデール生まれ

キーラ・ウォルシュは1997年にイギリスのロッチデールに生まれた。父はピーター、母トレーシー。サイクという郊外の街で育ち、父を相手に5才くらいからサッカーに興じ始めた。

競技の世界へ

ウォルシュはU-7(7歳以下)のチーム、ピアソン・ジュニアズに加入し、本格的な競技サッカーを開始する。8才になるとサンバ・スターズに加入した。どちらも男子のチームで、彼女は11才になるまでサンバ・スターズでプレーした。

スポーツ万能少女

一番好きなのはサッカーだったが、ウォルシュはランカシャーの女子クリケットチームの選手でもあり、バドミントンでも活躍し、水泳とネットボールのロッチデール代表選手でもあった。まさにスポーツ万能だったのだ。

技術を磨く

ウォルシュは11才になると、男子チームの一員としてプレーすることはもう認められなくなった。技術をさらに磨くため、彼女はフットボール・アソシエーションの練習センターに通い、ブラックバーン・ローヴァーズFCの女子部門の入団テストを受けて合格、同チームにU-12からU-17まで所属した。

ブラックバーン・ローヴァーズからマンチェスター・シティへ

ウォルシュはブラックバーン・アカデミーを卒業すると、16才で一軍の選手としてプレーしはじめた。1年間プレーした後、ウォルシュはブラックバーンを去り、イングランドの女子サッカートップリーグである「ウィメンズ・スーパーリーグ」で自分を受け入れてくれるチームを探した。しばらくして、彼女はマンチェスター・シティの入団テストに参加した。

コーチを驚かせる

マンチェスター・シティの入団テストが最後まで終わらないうちから、ウォルシュはその能力を存分に示し、指導陣を納得させた。トップチームの監督ニック・クッシングは、すぐさま彼女に攻撃的MFのポジションをオファーした。

「最高のサッカー知能の持ち主」

ウォルシュの素質にニック・クッシングは一発で参ってしまった。これまでコーチしてきた選手に比しても、ウォルシュはずばぬけた「サッカー知能」の持ち主だった。彼女は「ほとんど神がかっていた」と、クッシングは当時のことを語っている。

マンチェスターに引っ越す

マンチェスター・シティのスカウトを受け、ウォルシュはマンチェスターのセント・ビーズ・カレッジに引っ越した。彼女はそこからクラブのトレーニング施設に通った。

負けなしでリーグ優勝

チームに少しずつ馴染んでいったウォルシュは、ケガで欠場を余儀なくされながらも、2016年シーズンには先発メンバーに定着した。マンチェスター・シティはそのシーズンを負けなしで終え、リーグチャンピオンに輝いた。チームにとって初めてのWSL(ウィメンズ・スーパーリーグ)優勝だった。

上り調子の活躍

次のシーズンも、その次のシーズンも、ウォルシュは上り調子だった。彼女はプロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション(PFA)が選ぶ年間最優秀若手女子選手賞に、2016年から2019年まで連続でノミネートされた。

2019年女子ワールドカップ

イングランド代表は2019年の女子ワールドカップに優勝を目指して乗り込んだ。チームの要とみなされていたウォルシュは、ディープ・ライング・ミッドフィールダー(中盤の底、守備的なミッドフィールダー)としてプレーした。しかし、トーナメントでは力を十分に発揮できず、彼女は厳しい非難にさらされることになる。

批判との戦い

ウォルシュにとっても自身のパフォーマンスは到底満足のいくものではなく、一時は引退まで考えたという。ワールドカップの失態をなんとか乗り越えようとして、彼女はマンチェスター・シティからの移籍を断行しようとする。

コーチに説き伏せられて

ここで再びニック・クッシングが登場し、ウォルシュのサッカーキャリアにおいて重要な役割を果たす。彼はウォルシュを口説き落とし、すでに正式な移籍リクエストを提出していた彼女を思いとどまらせることに成功するのだ。クッシングの勧めもあって、ウォルシュは失った自信を取り戻すため、スポーツ心理学のカウンセリングを受け始めた。

UEFA欧州女子選手権の優勝

2022年の夏、イングランド女子代表はUEFA欧州女子選手権で初めて優勝する。チームの中心には、キーラ・ウォルシュの姿があった。決勝戦のドイツ戦は延長までもつれ込むドラマティックな試合だった。

バルセロナへ移籍

クッシングの説得を受けてマンチェスター・シティでプレーし続けることを決めたウォルシュは、さらに3シーズンを同チームでプレーし、いくつものトロフィーをチームにもたらした。2022年シーズンの初め、ウォルシュはスペインのビッグクラブ、バルセロナへ移籍する。40万ポンド(約6600万円)という移籍金は女子サッカー史における記録を塗り替えるものとなった。

二冠を獲得

バルセロナに移籍したウォルシュは、さっそく二冠を経験する。プリメーラ・ディビシオン・フェメニーナ優勝と、UEFA女子チャンピオンズリーグ優勝だ。

これからの展開に注視

キーラ・ウォルシュのワールドカップ今大会が、これからどんな展開を見せるのかは分からない。だが、相変わらず活力にあふれ、選手としても脂の乗ったウォルシュにとって、この時期の負傷は大きなダメージになるだろう。

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