安楽宙斗選手が銀メダルを獲得!スポーツクライミング日本男子初のメダル
パリ五輪のスポーツクライミング男子複合で、安楽選手が銀メダルを獲得した。金メダルに限りなく近い、ずっしりと重さのある銀メダルだった。東京五輪から採用されたスポーツクライミングで、男子初のメダルとなる。
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安楽選手は7日に行われた準決勝でダントツ1位で決勝進出を決めていた。複合はボルダーとリードの合計点で上位8人が決勝に進む。しかし、安楽選手はボルダーで高得点を出して他選手をあまりにも大きく引き離したため、リードを登らずとも上位8位以内が確定してしまったのだ。
さらにリードでも4位となり、2位の選手に14.8点の大差をつけて決勝進出を決めた。初出場の五輪でも、安楽選手はいつも通りの力をいかんなく発揮。17歳にして世界ランキング1位の肩書にふさわしい貫禄をみせつけた。
そして迎えた9日の決勝。前半のボルダーで安楽選手は再びトップに立つ。しかし、リードの終盤で、金メダルまであと少しのところで落下してしまい銀メダルとなった。
NHKのインタビューで安楽選手はこう語った:「リードラウンドは完敗だった。表彰台に乗ることは最低限の目標だったので、3位以内に入れたのはうれしいが、金メダルをねらって集中して一生懸命やってきたのですごく悔しい」
本人は結果に満足していないが、スポーツクライミング界にとてつもない新星が誕生した。今回は破竹の勢いで銀メダルを獲得した17歳の現役高校生、安楽選手のこれまでを追っていこう。
2006年11月14日に千葉県で生まれた安楽選手。『読売新聞』によれば、競技を始めたのは小学2年生の時で、父親がダイエットのためにクライミングジムに通い始め、それについていったのがきっかけだという。
東京2020大会から五輪競技となったスポーツクライミング。壁を登る速さを競う「スピード」、登った課題の数を競う「ボルダリング」、制限時間内にどこまで登れるかを競う「リード」の3種目ある。
ユース年代から頭角を現し始めた安楽選手。国内外の大会で表彰台の常連となり、世界ユース選手権のリード種目では2連覇(2021年と2022年)を達成している。
国内外の大会で結果を残しつつ、安楽選手は受験勉強に励んだ。『Sportiva』誌によれば、高校受験最盛期はクライミングジムに行くのは週1回で2~3時間ほど。それ以外は勉強に打ち込み、見事志望校に合格したという。
合格した千葉県立八千代高校は、難関大学合格者が多い進学校であると同時にスポーツにも力を入れている。体育科には各競技の猛者たちが集まるが、安楽選手は普通科の帰宅部。ただ「家に近いから」の理由のみでこの高校を選んだという。
また、学校では目立つタイプの生徒ではないが、スポーツでも勉強でも持前の負けず嫌いを発揮している。テストの成績はいつも上位。特に群をぬいているのが数学で、学年トップクラスだという。『読売新聞』が報じた。
得意科目の数学はクライミングにいかされているようで「NHKニュース」でこう語っている:「数学とクライミングは今まで蓄えた知識をもとにどう解決していくかを考える点が似ていると思います」
2023年9月、安楽選手はスロベニアで開催されたクライミングのワールドカップに参戦。初出場にもかかわらず快挙を成し遂げる。史上初となるボルダーとリードの2種目同時年間王者に輝いたのだ。
さらに11月にジャカルタで開催されたパリ五輪アジア予選のボルダーとリードによる複合でも優勝し、日本代表の座を手にした。ちなみに出場者の中でただ一人、全ての課題を完登して200満点中199.7点の圧倒的な勝利だった。
『スポーツ報知』紙によれば、大会終了後すぐに飛行機に飛び乗り翌日からの大阪への修学旅行に参加。「疲れていますが、せっかくなので行きます。ちゃんと(パリ五輪を)決め切って行けるので、気持ち良いです」と笑顔をみせたという。
安楽選手の身長は168cm。一般的に両腕を左右に広げた時の長さを指す「リーチ」は身長と同じとされるが、安楽選手は腕が長くて180cm以上ある。海外勢と比べて小柄ではあるが、リーチではほとんど変わらないのだ。
安楽選手の強さの秘密は、最小限の力で次のホールドにアプローチする独特な登り方にある。子どもの頃は誰もが体全体でうまく反動をつけて登るが、成長して筋力がつくと力に頼りがちになる。安楽選手は子ども時代の登り方を失うことなく今に生かしているという。「テレ朝ニュース」が報じた。
同じくパリ五輪代表で、長きに渡ってスポーツクライミング界を牽引する楢崎智亜選手は、安楽選手のことを各メディアでこう評価している:「宙斗は本番に強いタイプで、コンペの中での出来栄えの差が少ない」「力を使わずに登るのがうまい」「今までにない登り方」
Webサイト「CLIMERS」でのインタビューで、安楽選手は目標とするクライマーにフランス出身のメジディ・シャールック選手をあげている。練習ではなくコンペで勝つことに意味があるとし、シャールック選手は目指している選手の特徴に当てはまるという。
2023年にシニアデビューし、いきなりワールドカップのボルダーとリードで年間王者となり、パリ五輪では銀メダルを獲得した安楽選手。目指すのは「リードもボルダーもどちらも最強」と言われるような選手だ。