悲劇のスキー事故から10年:元F1王者ミハエル・シューマッハの現在の状態は
元F1の王者、ミハエル・シューマッハを襲った悲劇的な事故から10年以上が経過したが、いまもシューマッハの状態については分からないことが多い。謎に包まれたシューマッハの現状は、友人や家族から時折聞こえてくるコメントから推し量るしかない。
シューマッハが事故に遭ったのは2013年12月、フランスのスキーリゾート地メリベルでのことだった。スキー中の事故で頭を強く打ったシューマッハは一年近く昏睡状態に陥り、脳に重篤なダメージを負ってしまった。
以来、シューマッハ家は妻コリーナが管理し、多くの資産を売却して治療費に充てている。ジュネーブとマヨルカ島の邸宅での24時間体制での治療には非常に高額の費用がかかっているのだ。
では、そのシューマッハはいまどのような健康状態にあるのだろうか。もっとも参考になるのは2021年に公開されたNetflixのドキュメンタリー「シューマッハ」だろう。そこでは、シューマッハの現状が明かされている。
神経学者のエーリヒ・リーデラーは2022年にこう述べている:「シューマッハは息はしていますし、脈もあります。座ったり、介助があれば数歩歩くこともできます。でもそれだけです。それが限界です。事故前の姿に戻る可能性はないと思います」
Netflixのドキュメンタリーでコリーナはこう語っている:「もちろん、かつてのミハエルのことはいつも恋しく思っています。私だけではありません。子供たちや親戚、彼の父親や親しい人たち、誰もが彼のことを思っています。でも、ミハエルはここにいます。以前とは違った姿ではありますが。彼がここにいるということが、私たちに力を与えてくれるのです」
コリーナはこうも語っている:「ミハエルの治療のためにできることはなんでもしています。彼が快適に過ごして、家族との絆を感じられるようにしています。なにがあろうと、できることはすべてやります。それはみんな同じ気持ちです」
コリーナはこう結んでいる:「ミハエルが望んだであろうあり方で、家族としてあり続け、生活を続けようとしています。プライベートは重要だ、というのがいつもミハエルが言っていたことでした。ミハエルが自身のプライベートを最大限満喫できるようにすることは私にとっても大事なことです。ミハエルはいつも私たちを守ってくれました。いまは私たちがミハエルを守る番です」
また、ミハエルの息子ミックもこう語っている:「事故以来、多くの人が親と共にするであろう多くのことを経験する機会を失いました。全くないわけではないですが、それでも……つらいですね」
シューマッハの現状を知る人物として、ジャーナリストでありシューマッハ家の友人でもあるロジェ・ブノワがいる。ブノワは最近、ジュネーブに住むシューマッハの元を訪れているのだ。
2024年4月にスイス紙『Blick』がブノワにインタビューを行っている。それによると、シューマッハの状態は「希望が持てない」ものだという。ブノワはこうも語っている:「シューマッハの現状について何か言えることがあるとすれば、彼の息子のこの言葉に尽きるでしょう。ミックは『父と言葉を交わせるなら持てるもののすべてを差し出す』と言っています」確かに、事故から10年間のシューマッハの姿を端的に伝える言葉だ。
2024年1月、ベネトン時代(1994-1995)にシューマッハのチームメイトだったジョニー・ハーバートが英サイト「BettingSites」にこう語っている:「又聞きでしかありませんが、椅子に座って夕食をとることができると聞きました。本当かどうかはわかりません。直接聞いたわけではないので」
ハーバートはこう続けている:「家族から多くは聞いていませんし、それは理解できることです。ミハエルは現役時代からプライバシーを重視していました。(……)彼のことを知る人たちや、多くのファンが望んでいるような方向には進展していないように思います」
ハーバートはさらにこうも述べている:「快方に向かっているという話は誰もが聞きたがっています。ですが、何も情報がないということは、つまりは回復を期待できる状況ではないのだと考えるべきでしょう」
「家族から何も聞いていない以上、完全に個人的な見解だと断った上でのことですが、おそらくは事故直後からほとんど状況は変わっていないのではないでしょうか。家族はきっと、医療が進歩してかつてのシューマッハを取り戻してくれることを待っているんだと思います」
国際自動車連盟(FIA)元会長のジャン・トッドは何度かシューマッハのもとを訪れており、彼の状態について『デイリー・メール』紙にこうコメントしている:「ミハエルは戦っている。彼が戦い続けているのだから、我々も回復を期待しよう」
同紙上でトッドは、プライバシーを守りたいというシューマッハの家族の意志を尊重してほしいとも述べている:「彼の家族や友人がシューマッハを守ろうとしている気持ちは理解できる。そっとしておくべきだ」
また、仏紙『レキップ』が行ったインタビューで、トッドはこうも語っている:「ミハエルはここにいる。だからさみしくはない。(……)ただ、ミハエルはかつてのミハエルではない。変わってしまった。(……)残念ながら、10年前に運命が大きく変わり、F1時代のミハエルではなくなった」
さらに別のインタビューで、トッドはシューマッハの家族のことを賞賛している:「彼の妻と子供たちはシューマッハのことをしっかりと守っている。(……)彼は最良の人々に保護されているのだから、ファンは安心していい。彼のことを愛する人々に囲まれて、これ以上の環境はない」
シューマッハの現状については謎が多く、さまざまな推測を呼んできた。だが、関係者の話を聞く限り、少なくとも多くの人々が望む方向には向かっていないようだ。再びアスファルトの上を走るシューマッハの姿を目にするのは難しいのかもしれない。