柔道70kg級の新添左季選手が「ケンケン内股」で金メダルを目指す
女子柔道70kg級の新添左季選手が、ついに世界選手権を制した。パリ五輪代表の座も手にし、金メダルを期待されている。
1996年、新添選手は奈良県に生まれた。防衛省の広報誌によれば、柔道をはじめたのは小学1年生の時。すでに柔道をはじめていた兄に影響されたからだ。当初は勝負へのこだわりがなく、純粋に柔道を楽しんでいたという。
中学、高校と柔道に打ち込み、インターハイ出場を果たすも、3位が最高の成績だった。しかし、2015年に柔道の名門である山梨学院大学に進学したことが転機となり、才能が開花する。
2016年、大学2年生で初出場したシニアの国際大会「グランドスラム・東京」で、新添選手は大金星をあげる。決勝まで駒を進め、後に東京五輪で金メダルを得る新井千鶴選手を破り優勝したのだ。
この試合を見ていた全日本女子の増地監督が「投げる力は世界で一、二を争う」とほれ込み、東京五輪の出場権を新井選手と新添選手の間で競い合わせたいと考えた。しかし、新添選手は無欲そのもので、「心の中で正直かなわないなと思っていた。代表争いしたとも思っていない」と語っていたと『報知新聞』が報じている。
そして、新井選手は東京五輪に出場を果たし、みごと金メダルを手にした。すると直ぐに27歳の若さで引退を宣言。70kg級のエースがいなくなることで、新添選手にさらなる期待が寄せられた。
『日刊スポーツ』紙によれば、これまで辛抱強く新添選手の成長を待ち続けていた増地監督が、実績の乏しさから反対されたにもかかわらず、新添選手を世界選手権の代表に抜擢した。新井選手の引退をうけ、パリ五輪の70kg級の強化を図るためだという。
2022年、世界選手権に初出場した新添選手は、準決勝で反則負けを喫するも、3位決定戦を技ありで勝利し銅メダルを手にした。
そして2023年、新添選手がついに世界選手権70キロ級を制した。さらには男女混合団体でも大活躍し、金メダルに貢献。
世界選手権を制したことで、新添選手は本番まで13か月という異例の速さでパリ五輪代表の座を獲得した。新添選手の他に阿部一二三選手、阿部詩選手、角田夏実選手も柔道史上最速の内定を決めている。
画像:Instagram, @tsunoda_natsumi
『毎日新聞』社によれば、これまで柔道は五輪開催年の4月に代表を決めることが多かったが、早期代表内定者のメダルを取る確率が8割を超えるというデータがある。東京五輪も内定を早めたことで史上最多の金メダルを獲得したことから、2番手以下との差が明確と判断された選手は強化委員会の承認を経て代表が内定する規定にしたという。
新添選手の必殺技は「ケンケン内股」だ。一般的に知られている内股(相手を腰にのせず、脚を跳ね飛ばして投げる技)はスパッと一発で投げるが、新添選手はケンケンでしつこく追って投げるのだという。「テレ朝ニュース」が報じた。
ケンケン内股の秘訣は背筋力にある。『日刊スポーツ』紙によれば、新添選手は筋力トレーニングを積み背筋力が220kgに達しているという。ちなみに19~26歳の男性の背筋力平均値は160kgだ。
このケンケン内股の土台は柔道を始めた小学生時代に築かれた。指導者の得意技が内股だったのだ。新添選手は小学6年生時に既に身長が160cmあり、手足が長く力も強かったので自然とケンケンに行きついたという。『産経新聞』が報じた。
また、同紙によれば、小学生としては異例の稽古量も新添選手の内股に磨きをかけた。週100本の投げ込み。小学生のうちからこれだけの量をこなす選手は少なく、後に仲間たちから驚かれたという。
柔道日本女子70kg級はリオ五輪から2連覇を達成している。大きな期待を背負い、新添選手がケンケン内股で頂点を目指す。