レアル・マドリードに入団したキリアン・ムバッペ、母国フランスから批判を浴びる
サッカーフランス代表の絶対的エースでキャプテンも務めるキリアン・ムバッペ。しかし、長年在籍したパリ・サンジェルマン(PSG)を離れてスペインのレアル・マドリードに移籍してからというもの、母国フランスで多くの批判にさらされている。最近ではニコラ・サルコジ元大統領まで同選手を批判したことで話題になっている。
PSGの熱心なサポーターとしても知られるニコラ・サルコジ元大統領は、2022年には元国家元首として、カタール航空とのスポンサー契約とムバッペの契約延長の支持を表明。同氏は仏紙『ル・パリジャン』に対し、当時のことを回想しつつ、今季のPSGについて語っている。そのなかで、ムバッペの移籍を非難したのだ。
ただしサルコジ元大統領はPSGのサポーターとして、長年在籍したムバッペへの感謝と愛情も明らかにした。「ムバッペはクラブに7年間尽くしてくれた。それを忘れてはいけない。多くの感動を与えてくれたことにはサポーター全員が感謝しているはずだ」と語った。そのうえで、移籍については「誘惑があることは理解できる。隣の芝生は青い、ということだろう」と述べた。
一方で、同氏は「ムバッペがクラブを去りたかったことは理解できるし、その夢も理解できる。しかし、実際にクラブを去ることになったのは残念だよ。けれども、それも彼の決断だ」と一定の理解を示している。
ムバッペの退団は、スター選手揃いだったPSGの一時代の終わりを示している。サルコジ元大統領は、「多くのスター選手を集めたことは、世界的ビッグクラブとしての地位を築くために必要だった。イブラヒモビッチ、ネイマール、メッシ、ベッカム、ムバッペといった選手たちのプレーを見られた喜びを忘れることは決してない。素晴らしい経験だったよ」と振り返った。
さらにムバッペの退団がもたらす影響について、「おそらく、個人の選手の質よりチームのまとまりを大切にすべき時に来ていたのだろう。これこそ今まさに監督が取り組んでいることだ」と語った。
さらに同氏は、ムバッペとPSGの間で係争となっている給与の未払い問題にも言及。ムバッペはチームを離れた後、給与の一部に未払いがあるとして5500万ユーロを要求している。
サルコジ元大統領は、PSGに対し多額の支払いを求めたムバッペの対応を強く批判。報道によれば、ムバッペは、残りの給与を放棄したというPSG側の主張を否定しているという。
ムバッペが請求した金額は、2か月分の給与とボーナスに相当する。同選手はフランスプロサッカーリーグ(LFP)とUEFAに連絡し、UEFAもその要求を認めた。しかし、PSGが控訴したため、問題はまだ解決していない。
ムバッペは、2023年にはすでにレアル・マドリード移籍を決断していたと見られる。この影響で2023年のプレシーズンにはチームに合流していなかった同選手だが、給与やボーナスの一部の放棄することをPSG会長と口頭合意する代わりにチームへの参加を認められたとされている。
サルコジ元大統領は、ムバッペがPSG退団目前だった2022年夏、同選手に何度も電話をかけてPSG残留を説得。結果的にムバッペはPSGとの契約を2シーズン延長したという。それだけに今回の退団にはショックを受けているようだ。
フランス国内では、サルコジ元大統領だけでなく、メディアや元サッカー選手などからもムバッペに対する批判の声があがっている。特にスペイン移籍後もなかなか最高のパフォーマンスを見せられていなかったことで、批判を集めることになった。
元フランス代表クリストフ・デュガリーは、仏放送局「RMCスポーツ」に対して次のように語った。「ムバッペが調子を落としているのは、サッカー以外の問題に頭を悩ませているせいだろうね。以前はサッカーだけに集中できたから、存分に力を発揮できていたのだろう」
さらにデュガリーは、退団時にPSGがムバッペに「出し抜かれた」と批判。「とにかくPSGにもムバッペにも幻滅しているよ」と語った。
「ムバッペはリヴァプールへの移籍も考えたようだが、それは、PSGに望むものがなかったとか、シウバやレヴァンドフスキがいなかったとか、そんな理由だと聞いたときには、『一人の選手にもかかわらず、あたかも自分が監督やスポーツディレクターかのような言動で、どういう立場で発言しているんだ』と思ったよ」と、同氏はムバッペに対して非常に批判的なコメントを出している。
試合でのパフォーマンスや発言にも批判が高まっている。9月の代表戦でフランス代表がイタリア代表に敗れた際には、元フランス代表ビセンテ・リザラズが、ムバッペの試合後の発言を「不適切だ」と非難。「フランス代表のサポーターや、彼らが抱く不満や疑問に関心を向けるべきだ」と同氏は語った。
さらに、PSG会長のナセル・アル=ヘライフィやスポーツアドバイザーのルイス・カンポスを中心に、ムバッペを自己中心的だと非難する動きが巻き起こっている。
サルコジ元大統領の発言は、こうしたフランス国内のムバッペ批判のうちの1つだ。その一方で、同選手は、徐々にレアル・マドリードで調子を上げつつある。PSGとの争いはまだ終わりそうにないが、ムバッペの新天地での活躍に注目が集まっている。