現役最高齢サッカー選手、三浦知良の活躍を振り返る
欧州のクラブは毎年、今後の活躍が期待される若手サッカー選手を探し求めている。年齢はサッカー選手の市場価値を決める上で、とても重要なのだ。
けれども、年齢の壁に挑戦し続けるサッカー選手もいる:「カズ」こと三浦知良(56 )だ。ベテランストライカーとして知られるカズは今年2月、ポルトガル2部のUDオリヴェイレンセに期限付き移籍したのだ。
1967年2月26日生まれのカズ。18歳の若手選手たちに混ざってピッチに立つという、強靭なバイタリティーを見せているが、年の差はなんと38歳だ。新天地のUDオリヴェイレンセでは2005年生まれのジョアキン・ロドリゲスとローテーションを組んでいる。
現在はポルトガルでプレーするカズだが、キャリアのほとんどは2005年に入団した横浜FCで過ごしている。ブラジルやイタリア、クロアチアに加え、シドニーFC(オーストラリア)でもプレーするなど、世界を股にかける活躍を見せてきた。
カズのサッカー人生がはじまったのは6歳だった1973年のこと。叔父の納谷義郎が指導する少年サッカークラブ、静岡城内FCに入団したのだ。
1979年に静岡市立城内中学校に入学。1982年には静岡学園高校に進学し、サッカー選手としての才能を開花させてゆく。すでに目標はプロとしての活躍だった。
15歳にしてサッカーの国ブラジルに武者修行に旅立ったカズ。当時はポルトガル語もままならなかったというから大胆だ。そして1986年、19歳のときにブラジルの強豪クラブ、サントスFCとプロ契約を結ぶこととなる。
こうして、日本人選手として初めて国外でプロとなったカズはカンピオナート・ブレジレイロで頭角を現し、SEパルメイラスと特別契約を交わす。1988年にはECキンゼ・ジ・ノヴェンブロに移籍し、地位を確立してゆく。
ブラジルのフォワードたちが得点ばかり重視するのとは対照的に、カズは積極的にゲームの組み立てに参加。コリチーバFCに移籍すると59試合に出場、7ゴールを記録した。
無論、この活躍ぶりを日本のサッカーファンが見逃すはずはなかった。日本人サッカー選手として真のスターになったのは、カズが初めてだろう。1990年には帰国して読売サッカークラブ(現東京ヴェルディ)に入団、2度のリーグ優勝に貢献した。
読売サッカークラブはヴェルディ川崎に改名。カズは同クラブでの活躍ぶりが評価され、MVPをはじめとする複数の賞を1993年に獲得し、国民的スターとなる。とりわけ、ゴール後にカズが見せるパフォーマンス「カズダンス」は大流行、Jリーグ選手たちがこぞって真似するようになった。
1993年には日本年間最優秀選手およびアジア年間最優秀選手も受賞。1990年から1998年にかけてヴェルディ川崎で133ゴールを記録したほか、1994年にはジェノアCFCへ1年間のレンタル移籍。22試合に出場して1ゴールを決めた。
UCサンプドリアとのジェノヴァダービーで決めたこのゴールは、カズにとって感慨深いものだったようだ。後年、『ガゼッタ・デロ・スポルト』紙に対し、「自分のゴールでダービー優勝を果たすというのは強烈な喜びでした。今でもあのときの気持ちを覚えています」とコメントしている。
1998年にはクロアチア最大のクラブ、NKディナモ・ザグレブに入団したが、この挑戦はうまくゆかず京都サンガF.C.に移籍。2年間で24ゴールを挙げ、2001年にはヴィッセル神戸に移籍した。
2005年、横浜FCに入団したカズだが、すぐにオーストラリアのシドニーFCに期限付き移籍。しかし、4ヶ月後には横浜FCに復帰し、主力選手としてチームのJ1昇格に貢献する。
2014年8月17日、47歳5ヵ月22日でJ2における現役最年長選手となる。とはいえ、さすがのキング・カズももはやスターティングメンバーとしての出場はかなわず、終盤に投入されるだけになっていた。
そして2020年8月5日、53歳のカズはついにスタンリー・マシューズの記録を破り、プロサッカーの試合に出場した選手としては世界最年長となる。さらに、その後も出場を重ね、ポルトガルUDオリヴェイレンセでベテラン選手として挑戦を続けているのだ。