五輪の新種目ブレイキンでメダル獲得を狙うAyumi(福島あゆみ)選手
夏に開幕するパリ五輪で、新しく競技に加わるブレイキン。Ayumiこと福島あゆみ選手は20代でブレイキンをはじめ、38歳で世界の頂点に立ち、41歳で五輪代表最有力候補となっている、まさに異色づくめの選手だ。
ブレイクダンスと呼ばれることも多いブレイキンは、1970年代初頭にアメリカのニューヨーク州ブロンクス地区で誕生したストリートダンスだ。ファッションを含めた文化にまで発展し、今回パリ五輪で新種目となったことで大きな注目を集めている。
日本は世界トップクラスの選手が揃うブレイキン強豪国だ。パリ五輪男子代表が決定している半井重幸(なからい しげゆき)選手は、現在世界ランキング1位。女子代表最有力候補の湯浅亜美選手は、世界最高峰の2つの大会を2度ずつ制している。
スケートボード同様、ブレイキンは世界各国で若者を中心に人気を集めている。『読売新聞』によれば、新たな五輪種目となった背景には、スポーツ離れが指摘される若い世代の関心を集める意図があった。その人気は絶大で、パリ五輪で最初にチケットが完売した競技だという。
ブレイキンの選手は10代から20代が多く、ファン層も若者を中心に培われている。そんな中、1983年生まれの福島選手は、今年41歳になる大会最年長選手だ。
画像:instagram, @ayumi.bodycarnival
年齢だけが異色なのではない。半井選手や湯浅選手をはじめ、多くの選手が幼い頃からブレイキンを踊り始めているのに対し、福島選手がブレイキンに出会ったのは21歳の時だ。
「あすリートチャンネル」によれば、それまで本格的にスポーツをしたことがなかった福島選手が、21歳の時にダイエットになればと軽い気持ちで始めたのがブレイキンだったという。
『Number』誌によれば、初めての練習拠点は通行人もいる京都駅の一角で、文句を言われて練習ができない日もあった。初めて参加した試合は、小学生の女の子に完敗したという。
対戦式の試合はバトルと呼ばれ、DJの音楽に合わせ、即興で交互に踊って競い合う。複数の審判が身体能力、踊り方、自分らしさなどの基準で採点し、バトルの優劣が決定。パリ五輪では1対1の個人戦が行われる。
ブレイキンには基本となる要素が4つある。立った状態のままステップする「トップロック」、床に手をついて下半身を動かす「フットワーク」、スピンなどアクロバティックで迫力のある動作「パワームーブ」、動きを止めてポーズをとる「フリーズ」だ。この4つの要素を組み合わせ、独自のダンスを作り上げていく。
福島選手は掃除機や雑巾がけの動作をヒントに、細かい足さばきを特徴とした独自のダンスを作り上げた。それを自ら「お掃除スタイル」と名付け、「せかせかしている自分にフィットしている」と「TBSニュース」で語っている。
オリンピックチャンネルの公式アカウントによれば、ブレイクダンサーとして活動すると同時に、幼稚園で英語やダンスを教えていた。ダンスだけで生計を立てる人もいるが、他の仕事をすることで、心のバランスを取ることが出来たという。
画像:instagram, @ayumi.bodycarnival
2021年12月、福島選手は38歳で世界チャンピオンになった。決勝は日本人同士のバトルとなり、前大会覇者の湯浅選手を3-1で下した。
ブレイキン強豪国の日本でトップクラス入りした福島選手。幼稚園での仕事を一時休職し、1日4時間ほど練習に当てる生活を送るようになった。また、年齢的にケガや疲れと向き合うことが増えたと『読売新聞』で語っている。
画像:instagram, @ayumi.bodycarnival
2024年2月にブレイキン全日本選手権を3連覇した福島選手。現在、世界ランキングは7位にまで上昇し、パリ五輪代表の最有力候補に躍り出ている。
画像:instagram, @ayumi.bodycarnival
今年41歳を迎える福島選手がパリ五輪で、年齢が半分、あるいはそれ以下ということもあるライバルたちを蹴散らせば、会場のボルテージは最高潮に達するだろう。