競泳の池江璃花子選手、白血病を乗り越えてパリ五輪で頂点を目指す
競泳の池江璃花子選手が白血病を克服し、パリ五輪代表の座を手にした。いばらの道をふみこえて、3回目の五輪代表選手に選ばれるまでの軌跡を追って行こう。
輝かしい成績から「水の申し子」と称された池江選手。実際に生まれた時から「水の申し子」で、『産経新聞』によれば、水中出産で生まれると、少しの間水に漂い、抱き上げると元気よく泣きだしたという。
画像:Instagram, @ikee.rikako
『女性自身』誌によれば、池江選手の母親は、娘に百人一首をはじめ10種類ほどの習い事をさせていた。興味を示さないものは辞めてもいいというスタンスで、好奇心旺盛な池江選手はどの習い事も楽しんでいたようだったが、最後まで続けたのが水泳だという。
「Olympics.com」によれば、5歳になる頃にはクロール、背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎで50mを泳げるようになり、中学生時代に数々の中学生記録を更新。さらに2015年の日本選手権50mバタフライで優勝を飾った。中学生が日本選手権を制したのは、19年ぶりだったという。
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2016年、高校1年生でリオデジャネイロ五輪の日本代表に選ばれた。競泳の選手最多となる7種目に出場し、100mバタフライで5位に入賞した。
リオデジャネイロ五輪後は、バタフライや自由形などで数々の日本記録を更新。国内外の大会で優勝を重ねる入江選手が、東京五輪で更なる高みに到達することを誰もが信じて疑わなかった。しかし、とてつもない試練が池江選手を襲う。
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2019年、体調不良で検査を受けたところ白血病と診断されたのだ。自身のXでこう綴っている:「私自身、未だに信じられず、混乱している状況です......今は少し休養を取り、治療に専念し、1日でも早く、また、さらに強くなった池江璃花子の姿を見せられるように頑張っていきたいと思います......」
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『産経新聞』によれば、池江選手が発症した「急性リンパ性白血病」は、「リンパ系前駆細胞」が何らかの原因でガン化して骨髄内で増殖し、他の正常な白血球や赤血球などの血液細胞を減らしてしまう病気だ。16歳から30代の場合、大人より強い抗がん剤化学療法を行うのが一般的だという。
診断を公表してから3週間後、池江選手は自身のXにこんなコメントを残した:「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです。三日以上ご飯も食べれてない日が続いています。でも負けたくない」
『読売新聞』によれば、一時期は歩くことさえも困難な状態で、退院時には体重が18kgも落ちていた。筋力も低下していたがトレーニングを再開すると、医師が驚くほどの回復をみせたという。
2020年、池江選手は自身のインスタグラムに喜び溢れる投稿をした:「病院の先生の許可がやっと出て、プールに入ることができました。406日ぶりのプールらしい!言葉に表せないくらい嬉しくて、気持ちが良くて、幸せです」
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当初、池江選手はパリ五輪出場を目標に掲げていた。思うような練習ができず泣いてしまうこともあったが、「まだ、大丈夫。泳ぎ始めたばかり」と自身を奮い立たせた。そんな懸命な努力がコロナ渦による東京五輪延期と重なり、池江選手は2021年東京大会のリレーで日本代表の座を手にすることができた。『産経新聞』が報じた。
NHKニュースによれば、レース後に池江選手は涙をこぼしながらこうコメントした:「この数年間は本当につらかったし、人生のどん底に突き落とされてここまで戻ってくるのはすごく大変だった。1度は諦めかけた東京オリンピックだったけど、リレーメンバーとして決勝の舞台で泳ぐことができてすごく幸せだなと思った」
2022年の日本選手権水泳競技大会で、池江選手は5種目にエントリーし3種目で優勝を飾った。いずれも復帰後のベストタイムを記録しての金メダルだった。さらに翌年の同大会は4種目を制し4冠を達成する。
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2024年3月、パリ五輪出場をかけた国際大会選考会が開催された。NHKニュースによれば池江選手はこう意気込みを語ったという:「第3章が始まったみたいな感じ。第1章は高校生までの自分、第2章は病気から復帰した時の自分、第3章は本気で個人種目でパリオリンピックに向かうこと。今回は、そのためのスタート台に立つことだと思っている」
この大会の100mバタフライ決勝で、日本水泳連盟が定める派遣標準記録を上回ったことで、池江選手は悲願の個人種目でのパリ五輪日本代表の座を射止めた。自身のXにこうコメントしている:「やっと15歳の自分を超えられた。4年かかった」
いばらの道を乗り越えた池江選手が、パリ五輪の頂点にむけて一直線に進んでいる。これまで以上に輝きに満ちた勝利への道となるに違いない。