勝負はわずか2秒で決まる!飛び込みの三上紗也可選手が大技達成で金メダルを目指す
日本人選手が五輪のメダルを手にしたことがない競技のひとつが飛び込み。跳躍から着水までのわずか2秒にすべてをかけるのが飛び込みの選手たちだ。この夏に開催されるパリ五輪で、女子3m板飛込みの三上紗也可選手のメダルが期待されている。
2000年、三上選手は鳥取県で生まれた。『朝日新聞』によれば、競技をはじめたきっかけは学校で配布された体験教室のチラシで、母親から「めずらしい競技だからやってみたら」とすすめられた。すでに水泳と体操を習っていたので、両方の特徴を取り入れた飛び込みに直ぐ馴染んだという。
三上選手は小学4年生の時から現在まで安田コーチの指導を受けている。『読売新聞』によれば、地元の鳥取県には飛び込みの練習ができる室内プールがないため、冬の間は環境が整った他県の施設で合宿をするなど、長きに渡って二人三脚で五輪のメダルを目指しているという。
画像:Instagram,@sayaka.mikami_
「Olympics.com」によれば、2017年に三上選手は飛び板に後頭部を強打し、17針を縫う大怪我を負った。その影響で5分ごとに記憶をなくしてしまう「健忘症」になってしまう。責任を感じた安田コーチは辞任を申し出るが、三上選手や両親に指導の継続を嘆願され現在に至るという。
高校卒業後は進学するつもりだったが、安田コーチの「目標をかなえるには退路を断つことも必要」とのアドバイスを受け入れ、地元で1日に5~6時間ほど練習に打ち込んでいたと『朝日新聞』が報じた。
三上選手の身長は155cm。世界の選手達と比べて小柄だが、驚異的な脚力をもつ。『日刊スポーツ』紙によれば、日本人としては珍しいジャンプ力が武器のパワー型の選手だという。
そんなパワー型の三上選手は一発逆転の大技をもつ。水面から高さ3mの板の上で跳びあがり、入水までに前宙返り2回半、ひねり2回を行う「5154B」だ。回転数が多いため筋肉量の少ない女子には難易度が高く、世界で数人しか試合に組み入れていない。
三上選手はこの大技に高校1年生の時から取り組み始めた。「Olympics.com」によれば、安田コーチはこの大技を習得させるために陸上での練習から始め、ロープで体を吊りながら空中での姿勢を体に覚えさせ、高さに対する恐怖心を取り除いていったという。
2019年、初めて出場した世界選手権の女子3m板飛込みで、三上選手はノーミスの演技を連発。日本人選手として過去最高の5位入賞を果たし、東京五輪の切符を手にした。
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2020年、高校を卒業してから1年後、三上選手は日本体育大学に進学した。女子飛び込みの選手が多く在籍し、オリンピックを目指す練習環境が整っていたからだ。
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そうして万全を期して挑んだ東京五輪だが、失意の結果に終わってしまう。予選を5位で通過するも、痛い失敗で16位となり決勝に進出することも出来なかった。
そんな失意を乗り越え、2022年の世界選手権女子シンクロ板飛び込みでは金戸凜(かねと りん)選手とペアを組み、日本勢初となる銀メダルを獲得した。
『読売新聞』によれば、ペアを組んだばかりだが、パワーで劣る金戸選手が「紗也可ちゃんの演技を崩したくない」と筋力トレーニングで脚力を強化して三上選手に合わせることで同調性を生み出したという。
ペアで銀メダルに輝いた後、三上選手はFINA飛込ワールドカップの女子3m飛び込みで銅メダルを獲得した。そして2023年、世界水泳選手権で7位となり、メダルには届かなかったが規定を満たしたことでパリ五輪の切符を手にした。
水しぶきが全くたたないことを「ノースプラッシュ」と呼び、飛び込みの選手達はこのノースプラッシュの演技を目指している。また三上選手は小柄なので、宙返りのスピードでは誰にも負けないので注目してほしいと、日本体育大学のWebサイトで語っている。
報道によれば女子では数名しか跳ぶことのできない大技「5154B(前宙返り2回半2回ひねりえび型)」の精度が日に日にあがっているという。この夏、三上選手が世界最高の2秒を目指す。