2022年W杯カタール大会:映像で追う開会式
ワールドカップ史上最も物議を醸したカタール大会は、期待に違わず壮大で華やかな開会式で幕を開けた。
開会式会場に選ばれたのは、6万人規模の観客を収容できるアル・ベイト・スタジアム。ただし、開催国カタールはこのスタジアムで行われる開幕戦で敗北を喫することになる。
盛大な花火、会場を包み込む音楽、華麗なダンスやコンサート、さらにモーガン・フリーマンという予想外の司会者による開会式は約30分にわたり行われ、W杯の幕が切って落とされた。
始めはモーガン・フリーマンの声だけがスタジアムに響き、やがてレジェンドがその姿を現すというサプライズ出演で観衆は沸き返った。ベテランのハリウッド俳優には圧倒的なオーラがあふれていた。
オスカー俳優のモーガン・フリーマンはカタールでも高い人気を誇るほか、米国ワールドカップの招致に尽力するなど意外にサッカーとのゆかりが深い。生まれつき下半身がない起業家で大会アンバサダーのカリム・ムスタファとステージに並び、国や文化を超えた人々のつながり、寛容の精神といったメッセージを発信した。
開会式のもうひとりの主役となったのは、本カタール大会のマスコット「ライーブ」だ。白いターバンに大きな目がついた姿は、ユーモラスなおばけといったところだ。
FIFAによれば、「ライーブ」はアラビア語で「超一流の選手」を意味し、あらゆる人を鼓舞して自信を高めさせる存在だ。その使命を果たすべくライーブは巨大化し、宙に浮かんで会場を見下ろした。
キュートなマスコット「ライーブ」に加え、光と色が氾濫する中で一糸乱れぬ動きを見せるステージパフォーマンスにも大きな喝采が贈られた。
そして、南アフリカ大会の公式ソングであるシャキーラの「ワカワカ」を始め、これまでのワールドカップ全大会の公式ソングが響き渡った。ただし、シャキーラは本開会式でのコンサートオファーを断っているのだが。
イベントが最高潮を迎えた瞬間が、2022年カタール大会の公式ロゴのまわりに歴代ワールドカップのマスコットが一堂に会したときだろう。FIFAワールドカップのこれまでの歴史にオマージュを捧げるという、心温まる計らいとなった。
さらにステージ中央には本大会への出場32か国の公式ユニフォームが巨大なサイズで並べられた。W杯の歴史へのオマージュと合わせ、今回の予選を勝ち抜いた各国への歓迎の意が表された。
カタールを象徴する「砂漠」も開会式を彩る重要なエレメンツの一つとされ、アリーナは砂漠をイメージしたライトアップで満たされた。
砂漠といえば、ラクダだろう。伝統衣装に身を包んだ人々にひかれて世界地図の上にラクダたちが登場、大会が世界の人々のためのイベントであることを印象付けた。
音楽で主役となったのは、韓国の人気ポップグループ「BTS」のジョングク。本大会のために書き下ろされた公式ソング「Dreamer」を披露した。
ジョングクとステージに並んだのは、カタール出身の人気歌手ファハド・アル・クバイシ。丈の長い民族衣装に身を包んだファハドとフィジカルなダンスが圧倒的なコントラストを放った。
興味深いことに、大会前に話題を呼んでいたコロンビア出身のアーティスト、マルマは開会式会場であるアル・バイト・スタジアムに登場せず、市街地にあるアルビダパークのファンゾーンでパフォーマンスを披露した。
もちろん開催国の長による公式スピーチも行われた。カタール首長のタミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーは世界に向けて、ワールドカップの自国開催が長年の夢だったと語りかけた。
ワールドカップは母国カタールを世界中の人々に知ってもらうための絶好の機会と捉えているカタール首長は、スピーチの中でもそれを明らかにした。
盛大に花火が打ち上げられ、開会式は華やかなフィナーレを迎えた。ここから先は、各国を代表するフットボーラーたちが主人公となる。