五輪最高位スポンサーから日本の全3社が撤退:2028年ロサンゼルス大会に暗雲
パリ五輪から2028年ロサンゼルス五輪へと人々の注目が移る中、か、国際オリンピック委員会(IOC)はパナソニック、ブリヂストン、トヨタという日本のトップスポンサー3社との契約を終了。大きな転換期を迎えている。
多くの五輪スポンサー企業のなかでも、日本の3社は過去4年間でIOCに20億ドル以上を支払ったトップスポンサー15社に含まれている。トヨタは2024年10月1日、パリ大会後はパートナーシップを更新しないことを表明。米紙『ミラー』の報道によると、同社の豊田章男会長(写真)は、近年のIOCのあり方に疑問を呈しているという。
「政治色も強くなったし、こういう形でいいのかとずっと疑問に思っていたのが契約どおりにやめる理由だ。用具開発などの活動を継続していくことが、結果的にピープル、アスリートファーストの支援が続くことになると思う」と同氏は述べた。
2015年、トヨタはIOCと過去最大のスポンサー契約を締結。その金額は8億3500万ドルと報じられている。この契約は韓国の平昌で開催された2018年冬季オリンピックから、2024年パリオリンピックとパラリンピックまで4大会にわたって続いた。
パナソニックは2024年末でIOCとの契約を満了することを決めた。その後は契約を延長せず、次回オリンピックからは大会スポンサーを降りることになった。
パナソニックもトヨタ同様、IOCのトップスポンサー15社のうちの1社。パナソニックのスポンサーシップの金額は公表されていないが、4年ごとに20億ドル以上の支払いを行っているとされている。今回、パナソニックは37年間にもわたる長期のパートナーシップの終了を決断。同社は最も契約期間が長いオリンピックのスポンサー企業だった。
パナソニックは「経営環境や当社業容の変化に応じてスポンサーシップの在り方を常に検討している中で、今回の判断に至った」としている。
英紙『デイリーメール』によると、IOCのトーマス・バッハ会長は「パナソニックはワールドワイド・オリンピック・パートナー・プログラムの創設メンバーであり、オリンピックの主催者や、各国のオリンピック委員会、そして世界中のアスリートたちをサポートしてきた」と語った。
2028年のロサンゼルスオリンピックからは、パナソニックの技術的協力や支援を受けることが難しくなる。これは、過去40年間を通じて初めての事態となる。
これまでのオリンピックでは、大会の放送や式典に欠かせない業務用プロジェクターやカメラなどの重要な機器をパナソニックが提供してきた。
パリオリンピックでは、初めて競技に採用されたブレイクダンスで同社のDJターンテーブルが使用されるなど、パナソニックが行ってきた技術的貢献は計り知れない。
ロサンゼルスオリンピックでパナソニックが不在となることで、財政面だけでなく技術面でも大きな損失となることは間違いない。このため、IOCはパナソニックの代わりとなる企業を見つけなければならないだろう。
さらに、パナソニックとトヨタに続き、2014年からオリンピックのスポンサーである大手タイヤメーカー、ブリヂストンも現在の契約満了後はIOCとのスポンサー契約を更新しないと発表。
米紙『ミラー』によると、同社は今回の決断に関して、「企業ブランド戦略の変化にしたがい、今後はモータースポーツにより重点を置くため」だと説明しているという。
英紙『ガーディアン』によると、3社の決断の背景には、延期となった2020年東京オリンピックの影響があるという。同大会では、コロナ禍による無観客開催、費用の高騰、IOCの汚職スキャンダルによるイメージの低下など問題が噴出。これらが撤退の原因になったようだ。
英紙『インディペンデント』によると、現在のIOCの主要スポンサーには、Airbnb、アリババ、コカコーラ、デロイト、インテル、P&G、サムスン、VISAなどの大手企業が名を連ねている。
新たなスポンサー候補として、中東やインドの企業が取りざたされている。今後のオリンピック開催に向け、トヨタ等に代わる強力なスポンサーを得られるかどうかに注目が集まっている。