五輪に6大会連続で出場を果たす、アーチェリー古川高晴選手の軌跡
この夏開催されるパリ五輪への出場を決めた古川高晴選手。これで6大会連続の五輪出場となり、日本人選手の最多記録に並んだ。長年に渡って日本アーチェリー界をけん引し、ロンドン五輪で銀メダル、東京五輪では銅メダルを手にしている。
古川選手は現在39歳、1984年に青森県で生まれた。中学生の時は英語部で、球技の応援に行った際に偶然弓道の試合をみかけ「かっこいいな」と思ったそうだ。しかし、進学した高校には弓道部がなかったため「同じ弓だから」という軽い気持ちでアーチェリーを選んだと『毎日新聞』が伝えている。
画像:Instagram, @takaharu._.frukawa
すぐにアーチェリーに夢中となり、練習に没頭した古川選手。高校3年生で世界ジュニア選手権出場を果たし、さらに日本最大の国民スポーツの祭典「国民体育大会」で優勝を飾った。
アーチェリーは70m先にある直径122cmの標的に弓矢を放つ競技。最高点は中心の10点で、標的面を外れると0点となる。個人戦の決勝トーナメントは1セット3射で最大5セット。各セットで得点の高い選手が2セットポイントを獲得し、先に6セットポイントをあげた選手が勝者となる。
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大学はアーチェリーの強豪である近畿大学に進学し、1年生の時にアテネ五輪(2004年)の日本代表に選ばれた。『毎日新聞』によれば、アテネ五輪は緊張から「足が震えてというよりも、下半身がない感じ。全然力が入らなかった」という。結果は個人で2回戦敗退。
今思えばアテネ五輪は初出場に浮かれ、出場するだけで満足したていたと古川選手は振り返る。そして次の北京五輪(2008年)は、逆に結果をだそうと気負い過ぎ、個人戦の1回戦で敗退してしまう。『東京新聞』が報じた。
2012年のロンドン五輪で古川選手はついにメダルを手にする。『朝日新聞』によれば、16強に残った際に「準々決勝に勝って、準決勝に勝って、そうすれば......」と肩に力が入りかけたが、そんなことを考えたらだめだと気持ちを改めたことで銀メダルの結果につながったという。
続くリオデジャネイロ五輪(2016年)は8位に沈んだ。周囲が寄せる連続メダルへの期待におされて気持ちが乱れたという。そんな過去の五輪経験から平常心が最適解だと学び、東京五輪では「メダルへの意識はまったくなかった。とにかく自分のタイミングで打つことだけ」を考え無欲で矢を放った。『東京新聞』が報じた。
無欲の矢はロンドン五輪以来のメダルとなる銅メダルを射止めた。さらに男子団体でも日本史上初となる銅メダルを獲得。古川選手は3つ目のメダルを手にし、日本アーチェリー界で五輪最多メダルの記録を作った。
『サンケイスポーツ』紙によれば、古川選手は毎日500本近くの矢を打ちこんで体を追い込んだという:「落ちていく体力をつけていかないと。周りの選手は自分と年齢が離れている。自分も変えていかなきゃと思った」
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それだけではない。『TARZAN』誌によれば、アーチェリーは片方の腕で約2kgの弓本体を支え、もう一方で20kgの張力が発生する弦をひく。そして一定数の矢を放った後は的から矢を引き抜くため往復140mを何度も歩かなければならない。そのため古川選手は弓を射るだけではなく、筋力トレーニングやランニングも欠かさなかったという。
慢心を知らない古川選手は、東京五輪後にフォームの改造に着手した。『日刊スポーツ』紙によれば、体の中心の力を使って弓を引くように意識を変えたという。新しいフォームに挑戦することには勇気が必要だったが、「パリ五輪で金メダル」の意欲が気持ちを後押しした。
『読売新聞』によれば、競技を取り巻く環境や知名度を危惧している古川選手は、最多出場で注目されているパリ五輪で「アーチェリーって息長く五輪に挑戦できる素晴らしい競技なんだよ」とのメッセージを伝えるために、金メダルを目指しているという。
金メダルを目指す限り、最大のライバルとなるのは韓国だ。ロサンゼルス五輪から急速に力をつけ、現在は男女ともに圧倒的な強さで世界最強の座に君臨している。これまで獲得したメダルは金メダル27個、銀メダル9個、銅メダル7個だ。
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アーチェリーは勝敗の95%をメンタルが左右するという。近畿大学のオフィシャルサイトによれば、古川選手のスタイルは闘争心を燃やすのではなく、自分を落ち着かせて普段通りにやること。「自己ベストは出すのではなく、出てしまうもの」だという。
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パリ五輪で古川選手がいつも通りのスタイルを貫けば、おのずと「自己ベストが出てしまう」ことになるだろう。そうなれば念願の金メダルも射程圏内だ。