ミハエル・シューマッハのインタビューはAI製:家族が法的措置を検討へ

AIによる偽インタビュー
悲劇的な事故
現在のシューマッハは
偽インタビューが掲載される
「おもわず信じてしまうくらいリアル」
AI生成されたインタビュー
偽物と知りながら「世界初」をうたう
キャラクターを再現するAI
「驚くべき厚かましさ」
SNSでも怒りの声が
法的措置を検討
AIにまつわる倫理的課題が浮き彫りに
AIによる偽インタビュー

ドイツのゴシップ誌がミハエル・シューマッハのインタビューを「世界初」と銘打って公開、物議をかもしている。シューマッハが公の場から姿を消してからすでに9年以上が経過しており、そのインタビューが本物ならたしかに世界的センセーション確実の大スクープだった。だが、なんとそのインタビューがAI生成されたものだったのだ。

悲劇的な事故

ミハエル・シューマッハはF1史上でも並ぶもののない最高のドライバーだったが、引退直後の2013年12月、スキー中の事故で頭部に重い外傷を負ってしまった。その結果シューマッハは半年以上も人工的に昏睡状態に置かれることとなった。

 

事故についてはこちらもチェック:スキー事故で倒れた元F1ミハエル・シューマッハの現在は

現在のシューマッハは

以来、シューマッハの状態についてはほとんど明らかにされていない。シューマッハの妻のコリーナ(写真右)や息子のミックによると、ケアは受けているものの話すことはできないという。それだけに、インタビューが公開されれば大スクープのはずだった。

偽インタビューが掲載される

そんな中、ドイツの雑誌『ディー・アクチュエル』がシューマッハへのインタビューを発表、「全世界が気になっていた様々な疑問に答える」と打ち出した。だが、そのインタビューに答えたのはシューマッハ本人ではなかった。

「おもわず信じてしまうくらいリアル」

そのことは当然雑誌の編集者たちも知っていた。その証拠に、インタビューを報じる記事のタイトルのしたには小さな文字でこう書かれていたからだ:「おもわず信じてしまうくらいリアル」

AI生成されたインタビュー

そのインタビューで「シューマッハ」はこう語っている:「私の妻、子ども、そして家族全体にとってほんとうに恐ろしい時期でした。私は深刻なけがを負い、何か月も人工的な昏睡状態に置かれていました。そうしないと私の体が耐えられなかったからです。大変でしたが、病院のスタッフたちの尽力のおかげで、ついに家族と再会することができました」

偽物と知りながら「世界初」をうたう

ゴシップ誌の編集者たちはこのインタビューをチャット形式のAIに作成させており、偽物である事は当然認識していた。そのうえで「世界初」を銘打って販売したことになる。

キャラクターを再現するAI

このインタビューを生成したAIは「Character. AI」というウェブサービスのもので、実在・非実在を問わずさまざまな人物との応答を仮想的に再現できる。再現できる人物はソクラテスやナポレオンに始まり、ゲーム『スーパーマリオ64』のマリオもいるなどバラエティに富んでいる。

「驚くべき厚かましさ」

こうして現れた偽インタビューが物議をかもしたのはいうまでもない。事故の痛ましさを考えれば当然というべきで、特にレーシングファンの怒りは激しかった。ドイツのオンラインマガジン「Übermedien」は雑誌の編集部を評して「驚くべき厚かましさ」と言ったほどだ。

SNSでも怒りの声が

ドイツのメディア「Focus online」によると、ツイッター上では多くのファンがこの偽インタビューを「許せない」「笑えない」などと批判していたという。

法的措置を検討

シューマッハの家族もこのインタビューは見過ごせなかったらしい。「Übermedien」によると、家族はこのインタビューを掲載した雑誌に対して法的措置を取るつもりだとシューマッハの広報が述べたという。

AIにまつわる倫理的課題が浮き彫りに

今回の偽インタビューの件がきっかけとなり、AIの利用法についての議論を呼びそうだ。AIが急速に存在感を増す中、その利用範囲や利用に際しての倫理的な問題を検討することが社会的にも政治的にも喫緊の課題となっている。

写真:Pixabay / geralt

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