F1レーサーの政治的発言には許可が必要?:スポーツの中立性と選手たちの意見

レーサーに対する発言制限
国際モータースポーツ競技規則
政治的・宗教的・個人的発言はなし
問題発言を阻止
物議を醸すF1
「彼女の名前を言ってみろ」
FIAの対応
新ルールでは……
波紋を呼ぶ選手たち
ベッテルのコメント
ハミルトンが支持を表明
大した問題にはならない?
多様性の推進
政治的発言を繰り返すベッテル
「カナダの気候犯罪」
FIA側のコメント
レーサーに対する発言制限

このほど国際自動車連盟(FIA)は 、F1ドライバーが同連盟の許可なく物議を醸すようなアピールをすることを禁じる条項を追加。この措置は実質的にF1ドライバーの政治的発言を禁じるものとなる。

 

国際モータースポーツ競技規則

FIAが公開した2023年版の国際モータースポーツ競技規則では、物議を醸すおそれのある話題について、ドライバーが同連盟の公的中立の立場と相いれないアピールをすることは禁止されている。

政治的・宗教的・個人的発言はなし

「FIAが推進する中立の立場や原則に著しく反するような、政治的・宗教的・個人的な意見表明やアピールは認められない。ただし、国際競技会に関しては、FIAが書面を通して事前に承認した場合を除く……」

 

問題発言を阻止

この条項により、FIAの委員たちは、レースにおける活躍を利用して同連盟の利益に反する意見や信念を発信しようとするドライバーに対し、ブレーキを掛けることができるようになった。

物議を醸すF1

F1ドライバーたちの行動が世間を騒がせることは珍しくない。たとえば、7度の優勝経験を誇る世界チャンピオン、ルイス・ハミルトンは2020年のトスカーナグランプリに出場した際、「ブリオナ・テイラーを射殺した警官は逮捕すべし」と書かれたTシャツでレース後に姿を現し、FIAを苛立たせている。

 

「彼女の名前を言ってみろ」

ハミルトンのTシャツの背中には、死亡したブリオナ・テイラーのイラストと「彼女の名前を言ってみろ」という言葉があしらわれていた。

FIAの対応

この事件を受けてFIAはルールを変更。ドライバーがレース前や表彰式の際にレーシングスーツ以外の服装をすることを禁じた。

 

新ルールでは……

新しい規則によれば、「表彰式およびレース後のインタビューの際、1位・2位・3位に入賞したドライバーはドライビングスーツをファスナーを開けずに、首元まで締めた状態で着用しなくてはならない」とされている。

 

波紋を呼ぶ選手たち

しかし、波紋を呼んだF1ドライバーはハミルトンだけではなかった。2021年のハンガリーグランプリでは、セバスチャン・ベッテルが「Same Love」と書かれたTシャツを着用し、ハンガリーにおける反LGBT法に抗議、物議を醸すこととなった。

ベッテルのコメント

その後のインタビューでベッテルは「私は何をされても構いません。もう一度やるまでです」とコメント。

 

ハミルトンが支持を表明

この行動についてハミルトンは支持を表明。インタビューの中で「(ベッテルが)今週末、この国のLGBTQ+コミュニティの人々に寄り添う姿勢を見せたのは、素晴らしいことだと思います」と述べた。

大した問題にはならない?

ハミルトンはさらに、「大会の初めに私もその話をしましたが、ベッテルにとってあの行動は不可欠だったのでしょう。おそらく大した問題にはならないはずです」と付け加えた。

 

多様性の推進

そして、「私たちは立ち向かう姿勢を見せなくてはならなりません。私たちが推進する多様性と包括性には、LGBTQ+コミュニティも100%含まれているんです。ベッテルは立派だと思います」と締めくくった。

 

政治的発言を繰り返すベッテル

実際、ベッテルの「Same Love」Tシャツが大きな問題として取り上げられることはなかったが、それかあらぬかベッテルはその後も政治的発言を繰り返している。

 

「カナダの気候犯罪」

2022年のモントリオールグランプリでベッテルが着用したTシャツには、石油パイプラインのイラストと「カナダの気候犯罪・オイルサンドの採掘中止を」という言葉があしらわれていた。

 

FIA側のコメント

一方、FIAの役員たちも声明を発表。国際モータースポーツ競技規則の変更は「スポーツの政治的中立性を普遍的かつ基本的な倫理原則として」支えることを目的としたものであり、「人々の尊厳や人権を擁護し、差別的発言を抑制してゆく」と宣言した。

 

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