F1カタールGP決勝:メルセデスチームの「同士討ち」におわる
2023年のF1カタールGP決勝で、7度のF1ワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンが、チームメイトのジョージ・ラッセルと接触した。後に自身のSNSで「100%自分が悪かった」と謝罪している。
同じメルセデスのチームメイトであるハミルトンとラッセルは、スタート直後最初のコーナーで接触してしまった。ハミルトンはリタイア、ラッセルは最終的に4位まで挽回するも、接触後は最後尾に追いやられてしまう。
グリッドの先頭にいたのは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンだ。この接触により、フェルスタッペンが3年連続でF1ワールドチャンピオンとなるのを阻止することができず、メルセデスの両ドライバー、そしてチームにとって痛恨の結果となってしまった。
過去にもF1シーズンの重要な局面で、チームメイト同士の接触や衝突がたびたび起きている。今回はF1史上に刻まれた、チームメイトによる重大な接触事件の数々を振り返ってみよう。
F1の伝説的ドライバー、故アイルトン・セナとアラン・プロストは、80年代後半から90年代前半にかけて熾烈なライバル関係を築いていた。こうしたライバル意識は、両者がマクラーレン・ホンダに加わり互いにチームメイトになったときも続いていた。
1989年のシーズン、セナとプロストは同じチームでF1タイトルをかけて争っていた。日本GPで残り6周となった時、セナは後方からプロストのインに飛び込むが、プロストが半ば強引にブロック、2台は接触してしまう。結果、プロストがタイトルを獲得し、セナは失格処分となった。
ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンはカートに乗っていた少年時代からのライバルで、メルセデスでチームメイトとなってからも激しいバトルを繰り広げていた。最悪の同士討ちが起きたのは、2016年のスペインGPだ。
ロズベルグは開幕から4連勝、前年から数えれば7連勝中で、初となるタイトル獲得を狙っていた。しかし、スペインGPのオープニングラップでロズベルグとハミルトンは接触、両者リタイアでメルセデス全滅の悲惨な結果となってしまった。
レッドブルのダニエル・リカルドと3度のワールドチャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペンが、2018年の第4戦アゼルバイジャンGPで同士討ちの失態をおかした。リカルドはこのクラッシュの数か月後、レッドブルを去りルノーに移籍している。
フェルスタッペンはバッテリーに問題を抱えており、ペースが伸びずリカルドのオーバーテイクを阻んでいた。その後、スリップストリームに入ったリカルドが前を行くフェルスタッペンと衝突。2人は共にリタイアとなってしまった。
1999年のオーストリアGPで、ミカ・ハッキネンはF1ワールドチャンピオン獲得への絶好のチャンスを迎えていた。ライバルのミハエル・シューマッハが、クラッシュで足を骨折し欠場していたからだ。
しかし、味方であるはずのチームメイトのデビッド・クルサードが、ハッキネンをスピンアウトさせてしまう。クルサードは自ら優勝を狙いにいくが、最終的にフェラーリのエディ・アーバインが逃げ切りに成功し勝利した。
2010年はレッドブルが競争力を高めた最初のシーズンで、マーク・ウェバーとセバスチャン・ベッテルがファーストドライバーをめぐり争っていた。
同年のトルコGPでは、ポールをとったウェバーがレースをリードしていたが、ベッテルがオーバーテイクをしかけ、お互いに全くスペースを譲らなかったため並走する形となった。その後、二人は接触しベッテルはスピンしてリタイア、ウェバーはコースオフとなったが、かろうじて3位でフィニッシュした。
F1ドライバーが守るべきルールは2つしかない。1つ目は相手より速く走ること、2つ目は他のドライバー、特にチームメイトと接触しないことだ。
しかし、シビアなF1の世界では、味方同士でもライバル関係が発生し、中には今回紹介したようなF1ワールドチャンピオン獲得に影響を与えるようなクラッシュを引き起こすこともあるのだ。