NFLプレイヤーがポケモンマスターに!?:ブレイク・マルティネスの華麗な転身
2016年のデビュー当時、NFLで最も注目を集めるインサイドラインバッカーの1人だったブレイク・マルティネス。
ドラフト4位でグリーンベイ・パッカーズに指名されたブレイクに、チームのコーチは好印象を持った。その結果、新人でありながらスターティングメンバーとしてインサイドラインバッカーを任されることに。
『Milwaukee Journal Sentinel』紙のミシェル・コーエン記者は、「スタンフォード大学所属の4位指名選手だったブレイクは、飲みこみの早さでコーチやチームメイトに好印象を与えた」と書いている。
新人を起用するというチームの選択は大成功。ブレイクはプロ入り後初となるシーズンで、合計69タックル(ポストシーズン戦での3タックルを含む)を記録する大活躍を見せたのだ。
スポーツ専門チャンネルESPNによれば、ブレイクのパフォーマンスは2017年に最高潮に達し、タックル数が倍増したほか972回のディフェンシブスナップを記録したという。
ESPNのロブ・デモブスキー記者は、「昨シーズン、フィールドでブレイク・マルティネスよりもスナップをたくさん決めたパッカーズのディフェンダーは1人しかいない。セイフティのハハ・クリントン=ディクスだ」としている。
2017年、ブレイクはタックルでもNFLをリード。パッカーズのスーパーボウル出場をかけて、非常に高いパフォーマンスを発揮し続けた。
ブレイクがニューヨーク・ジャイアンツに移籍した際、スポーツ記者のマット・シタックは「ブレイク・マルティネスは過去3シーズンにわたって NFLで最も安定感のあるタックラーだった」と書いている。
今やベテランのラインバッカーとなったブレイクは2020年にニューヨーク・ジャイアンツと3,000万ドルで選手契約。怪我で休場を迫られるまで、同チームで1シーズンにわたってプレーすることとなった。
しかし、2021年のシーズン3週目のアトランタ・ファルコンズ戦で前十字靭帯を断裂。シーズンの残りの試合に出場することはできなかった。
翌年、ジャイアンツは元キャプテンだったブレイクをリリースする決断を下した。しかし、当のブレイクはこの決定を前にしてもあまりめげる様子はなかったようだ。というのも……
CNBC放送のミーガン・サウアー記者いわく、「リハビリ中、彼はコロナ禍初期にはじめた副業の方にますますのめり込むようになった」らしいのだ。
ブレイクの副業は、NFLトップ選手が取り組むビジネスとしては思いがけないものだった。スポーツ用品の監修やコンサルタント業をはじめる代わりに、もっと身近なビジネス、つまりポケモンカードの取引に手を出したのだ。
サウアー記者によれば、高校生時代のブレイクは地元のサークルKでポケモンカードを購入し、集まったカードをバインダーに入れてコレクションしていたという。そして、コロナ禍の最中にインフルエンサーたちがポケモンカードを転売しているのを見て、自分も昔のコレクションを売り払うことを思いついたのだ。
しかし、ブレイクのコレクションは母がすべて処分してしまっていたので、3万ドルを費やして取り戻さなくてはならなかったらしい。けれども、それによってブレイクはポケモンカードの真の価値に気づかされることとなる。
写真:Instagram @blakes.breaks
サウアー記者いわく「ブレイクは数万ドルかけてポケモンカードを一度に36箱購入」し、開封する様子をライブストリーミングで実況したが、これがブレイクのビジネスの出発点となった。
写真:Instagram @blakes.breaks
同記者はさらに、「新たなチーム(ラスベガス・レイダース)でのポジションを勝ち取るために闘うか、ポケモンカードの売り上げを倍増させるかという岐路に立たされたとき、ブレイクが下したのは驚くべき決断だった」と付け加えている。
ブレイクがNFLを離れてはじめたポケモンカードビジネスは大成功。売り上げは500万ドルに達したというから驚きだ。
写真:Instagram @blakes.breaks
今では自前のビジネスブランド「Blake's Break」を立ち上げ、運営をサポートするチームまで雇っているブレイク。ただし、アメフトのキャリアを逃してしまったことについて、後悔の念もにじませている。
写真:Instagram @blakes.breaks
しかし、2023年2月下旬にブレイクとのインタビューを行ったサウアー記者によれば、彼のアメフトへの想いはフィールドへの復帰を促すほど強いものではないようだ。
サウアー記者に対しブレイクは、「毎朝、目が覚めたとき肩や背中が痛むことはもうありません」とコメント。
そして、「痛むのは、1日に1000袋カードを開封する指くらいなものです。この仕事を続けようと思います」とした。